ほっと一息
2024.07.17
資産管理の法律ガイド 借地権と民法上の賃借権(13)
JA広報通信2009年6月号
JA全中・JAまちづくり情報センター 顧問弁護士●草薙一郎
今回は競売による借地権の譲渡について説明します。
借地人の建物に抵当権が設定され、建物が競売されるケースがあります。この場合、建物所有権が落札者に移転することになるため、建物所有権の従たる権利である借地権も、落札者に移転することになります。
つまり、建物の競売は借地権の譲渡を伴う結果となるわけです。このことは土地所有者である貸主から考えると、建物の競売は借地人の変更ということになり、貸主が競売による借地人の変更を認めるか否かの問題になるということを意味しています。
そこで、貸主としては建物が競売になった時には、誰が建物所有者、つまり借地権者になるかを注意しておく必要があります。一般的には、落札後に落札者から連絡が入ると思いますが、その時は建物の登記簿謄本で落札者が所有者として登記されているかを確認してください。その上で、その落札者を新借地人として認めるかを検討しましょう。認める時は、前回説明した任意譲渡と同じように、承諾料のほか敷金を支払ってもらうよう注意します。
認めない時は、落札者から賃借権の譲渡について承諾に代わる許可の裁判が申し立てられます。その裁判の中で貸主に不利益がなければ、裁判所は譲渡の承諾に代わる許可をします。この時、貸主としては落札者に対して、承諾料のほかに相当な敷金を支払うよう主張します。任意譲渡の時は、旧借地人らと交渉する余地はありますが、競売のときは承諾に代わる許可だけでは落札者は敷金のない状態なので「敷金を支払え」と主張することを忘れないようにしましょう。(ここでは落札者としましたが、条文では正確には買受人といいます)