ほっと一息
2024.05.18
介護ハンドブック 義母に強く当たる夫、これって虐待では?
JA広報通信2024年4月号
介護者メンタルケア協会代表●橋中今日子
認知症の症状が進んだ要介護者を目の当たりにすると、家族はショックを受けるものです。現実を直視するのがつらく、防衛的反応からきつい態度を取ることもあります。暴言や暴力はエスカレートする可能性があり、早期の対応が必要です。
認知症の義母に暴力を振るう夫
関東在住のTさん(女性・50代・会社員)は、認知症の義母(要介護2)と夫との3人暮らしです。義母は最近認知症の症状が進み、一日中何かを探しています。その様子に夫はいら立ち「いいかげんにしろ!」「しっかりしろよ!」と怒鳴り散らします。先日は、何度も同じことを聞く義母に対して「何度言ったら分かるんだ!」と手を上げているのを目撃してしまいました。いつもは優しく穏やかな夫が、人が変わったかのように義母に対して怒鳴り、暴力を振るう様子に、Tさんはショックを受けました。
「虐待かも?」と感じたときは地域包括支援センターへ
Tさんは意を決してケアマネジャーに相談し、義母は週1回のショートステイの利用が決まりました。「ご主人とお義母(かあ)さまは、少し距離を取ることが必要です」とのアドバイスを受け、認知症グループホームへの入居手続きも進めています。義母の施設入居を自分から切り出していいのかどうか迷っていたTさんでしたが、ケアマネジャーから「お嫁さんの立場だからこそできた決断だと思います。この選択はお義母さまだけでなく、ご主人を守るためでもありますよ」と言ってもらえてほっとしました。
要介護者と介護者の双方を守るためには、第三者の関わりが必要です。介護保険を利用している人はケアマネジャーに、まだ利用していない人や、ご近所さんや親族などで、直接ケアマネジャーに相談できない立場の人は、地域包括支援センターに相談しましょう。相談したからといって、いきなり介護者が罰せられることはありません。相談は匿名でも可能なので安心してください。