ほっと一息

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2024.05.16

なくそう食品ロス 食品ロスはなぜ減らさなければならないの?

JA広報通信2024年4月号

食品ロス問題ジャーナリスト●井出留美

 

 2024年、第6回となる恵方巻きの売れ残り調査を実施しました。2019年から毎年、節分の夜に小売店を回り、売れ残っている恵方巻きの本数を数えるというものです。
 今年は高校生や大学生なども含め、10代から60代までの有志が調査に協力し、大手コンビニエンスストア101店舗を回りました。
 ところで、多くの人が恵方巻きの売れ残りなんて人ごとだと思っていませんか? 店が捨てるんだから、自分たちには関係ない、と。決してそんなことはありません。
 なぜなら日本では多くの自治体が、コンビニやスーパーの売れ残りを「事業系一般廃棄物」として収集するものの、最終的には家庭ごみと一緒に焼却処分しているからです。東京都世田谷区ではこの処理費に1kg63円の税金を費やしています(2023年4月、世田谷区発表)。
 日本全体では、一般廃棄物の処理費は年間2兆1449億円です。これは、われわれが納めた税金の結集です。一般廃棄物のうち40%が生ごみと考えれば、約8500億円が単に食べ物を燃やすために使われています。生ごみの80%以上は「水」です。燃えにくいものを、わざわざ膨大なエネルギーとコストをかけて燃やしているわけです。
 今回調査したコンビニ101店舗では、1750本の恵方巻きが売れ残っていました。もし全国のコンビニ5万5713店舗で同様に残っていたとすれば、7億881万6442円分の恵方巻きの食品ロスが発生していたことになります(著者調べ)。
 食品ロスは、なぜ減らさなければならないのか。経済損失であり、環境負荷であり、そのお金があれば雇用や医療、教育、福祉など、他の有用なことに使えたはずだからです。
 捨てるコストは食料品価格に含まれています。食品ロスを大量に出す限り、われわれ消費者は、食品価格と税金と、ダブルで余計な費用を負担し続けなければならないということを肝に銘じておきましょう。

 

 

食品ロス問題ジャーナリスト 井出 留美(いで るみ)


株式会社office3.11代表取締役。博士(栄養学/女子栄養大学大学院)修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。『食べものが足りない!』『SDGs時代の食べ方』『捨てないパン屋の挑戦』など著書多数。