ほっと一息

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2024.05.04

お天気カレンダー 高気圧と遅霜

JA広報通信2007年4月号

財団法人日本気象協会●千葉善明

 

 昔から「八十八夜」は、茶摘みや苗代のもみまきなど農作業の目安とされてきました。また「八十八夜の別れ霜」ともいわれて、このころから霜の降りる日数が極端に少なくなります。

 しかし、「九十九夜の泣き霜」ということわざがあり、油断できません。この時期は、「新緑寒波」や「さつき寒む」のように、突然春先のような冷たい空気が日本付近を覆います。この影響で、農作物などに大きな被害をもたらす霜の降りる日があります。霜の被害は、最も古くからある農業災害ともいわれています。

 そこで、地域によって多少条件が違いますが、翌日の最低気温が4度から3度以下と予想される場合、気象台が霜注意報を発表します。霜が降りやすい地形は、周りが山に囲まれた盆地です。しかし、盆地全体が一様に霜の被害を受けることはなく、冷たい空気が流れ込みやすい沢沿いの「霜道(しもみち)」や冷たい空気がたまりやすいくぼ地の「霜穴(しもあな)」と呼ばれる場所で被害が拡大します。

 霜の降りやすい日は、日本列島付近が高気圧に広く覆われて風が弱く晴れた朝となります。しかし、高気圧に覆われるといつでも霜が降りるとは限りません。九州の西から来る高気圧は、暖かな東シナ海を渡ってくる影響で霜の降りる可能性は低くなります。一方、朝鮮半島から対馬海峡を通ってくる高気圧は、冷たい空気を持ったまま日本列島付近を覆い、霜の降りる可能性が非常に高くなります。

 八十八夜を過ぎても油断できません。霜の被害を最小限に抑えるには、高気圧のコースにも注意する必要がありそうです。