ほっと一息
2024.05.01
身近な草木 和ハーブ入門 チャノキ 不老長寿のパワーを丸ごと摂取
JA広報通信2024年5月号
植物民俗研究家/和ハーブ協会副理事長●平川美鶴
「夏も近づく八十八夜」。立春から数えて88日目(2024年は5月1日)が葉摘みシーズンです。チャノキ(茶の木)はあまりに身近なためその価値に気付きづらいかもしれませんが、いわゆる「お茶」として飲むことはもちろん、料理の素材や香り付け、殺菌消毒、浴用など、暮らしへの応用範囲が大変広い和ハーブです。
世界最古のハーブ事典『神農(しんのう)本草経』を記した「薬草の神様」神農は、365種類のハーブについてその内容をまとめました。その際、72回も毒に当たり、全てチャノキで解毒していたという伝説があります。その他にも抗菌、免疫力向上、覚醒、利尿、美肌、虫歯予防などさまざまな効果が期待でき、香りの高さも魅力です。
とはいえ、チャノキをお茶で摂取できる水溶性成分は素材全体の20~30%にとどまります。実はそれ以外に食物繊維が30~40%、グルテリン(タンパク質)が25%ほどあり、脂溶性の有効成分なども合わせると、不溶性成分がなんと全体の70~80%を占めています。
そこでベータカロテンやビタミンEなど、脂溶性の栄養素を存分に引き出しながら丸ごと摂取できる「チャノキオイル」をご紹介します。
「チャノキオイル」を作ろう
作り方はとても簡単です。緑茶の葉を煮沸消毒した保存瓶に入れ、油(米油、太白ごま油など)500mlと一緒に漬け込むだけ。
緑茶の葉はお茶で飲んだ後の出がらしでも構いませんが、その場合は茶葉に付いた水分を乾かした後、軽くばい煎します。茶葉を浸しておよそ半月で油の色が変化しますので、塩を添えてパンに付けて食べたり、白身魚のカルパッチョに垂らしたりして、ほのかなお茶の香りと彩りを楽しみましょう。
チャノキオイル。
もえぎ色が新緑を思わせる
植物民俗研究家/一般社団法人和ハーブ協会副理事長 平川 美鶴 (ひらかわ みつる)
8月2日“ハーブの日”生まれ。全国各地の足元の植物と人のつながりを訪ね、日本人らしい生き方や感性を探求。講演、執筆、ものづくり、フィールド案内、実践ワークショップ、地域創生プログラムなど幅広く携わっている。著書に『和ハーブのある暮らし』(エクスナレッジ)など。