ほっと一息

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2024.04.25

心に効く! このひとこと 「他人のことより、まず自分」

JA広報通信2007年4月号

 エッセイスト●小川由里

 

 数年前、ある委員会の休憩時。私は隣席の年配男性に思わずため息交じりに言ってしまいました。

 「こんなに忙しい役だとは思いませんでした。まだ1年目ですが重荷になっています。あなたは長年この委員をされていると聞きましたが、大変ではないのでしょうか」と。

 彼は微笑を浮かべ、すぐに明快な口調でこう答えてくれました。

 「他人(ひと)のことよりまず自分、ですよ。先に委員の仕事を全部こなしていると自分のことが何もできなくなります。まず、自分の仕事や、やらなきゃいけないと気になっていることを済ませ、そのあとで委員の宿題や課題に取り掛かればいいんだ、という気持ちでいいのですよ」

 あっ、なるほど! その言葉が私の心にぐいっと染みて効いたのはいうまでもありません。急に気持ちが軽くなりました。

 それ以来、やることだらけで「何から手をつけたらいいのだろう」と焦ってしまうとき、私はこの言葉をおまじないのように唱えています。

 すると、あーら不思議、「今日、自分が何からやり始めたらいいか」が見えてきます。自分のことを優先して予定範囲まで終わると、心は穏やか。すると他人のことも余裕を持って手伝ったり、相談に乗ったりすることができるのです。

 自分自身の問題すらちゃんと解決できないのに、他人のことに介入する人のことを「頭の上のハエも追われぬくせに」といいます。そう「他人のことより、まず自分」というのは、まず頭の上のハエを追い払って、自分のことが片づいて初めて他人のことも真剣に考えられるんだよ、ということなのですね。