ほっと一息

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2024.03.29

みんなのSDGs 田んぼソムリエになろう えぐい! クログワイ

JA広報通信2024年3月号

田んぼソムリエ●林 鷹央

 通常を超えるすごいものを見たときや苦さを味わったときに「えぐい!」と言うことがあります。現代っ子のはやり言葉かと思いきや、昔から使われていました。その語源は田んぼの雑草「クログワイ」。球根がクワイに似ていて黒っぽいのが名前の由来ですが、あくが強くて「えぐい味」なので球根を「えぐ」と呼んでいました。でもあく抜きして食べられるので、救荒植物※として重宝され、水路などに植えられていたそうです。
 そのようなわけで、雪解けの時期は水路でえぐを探す習慣がかつての日本にはありました。そんなクログワイでしたが、水路がコンクリート化されて見られなくなると思いきや、雑草として稲の収量に影響を与えるほど田んぼの中で猛威を振るっています。土の下の方で広がり、株が丈夫なため除草も大変。別の意味で農家から「クログワイえぐいわ!」と言われています。
 しかしながら都会では観賞用の「わび草」として水鉢で大切に育てられていたりと、風情ある見た目が評価されてもいます。
 かつては人間の都合で増やされ食料だった草が、強害雑草、観賞用とたくましく生き残る姿を見ると、力が湧いてきませんか?
※救荒植物……食料不足時に食べられる野草のこと。

 


稲を追いやる勢いのクログワイ

 

 

食料にもなるクログワイの塊茎

 

 

 

田んぼソムリエ 林 鷹央(はやし たかお)

三重県生まれ、東京育ち。「田んぼの生きもの調査」を通して全国の農村・学校で生物多様性や農・里山文化の意義を伝える。著書に『田んぼソムリエになる!』(安心農業株式会社刊)がある。