ほっと一息
2023.12.17
みんなのSDGs 田んぼソムリエになろう 田んぼで見かける春の七草は?
JA広報通信2023年12月号
田んぼソムリエ●林 鷹央
年が明けると正月7日に一年の英気を養う願をかけ、春の七草がゆを食べます。私は七草を次のような語呂の良い順番で暗記しています。
♫スズナ、スズシロ、セリ、ナズナ、
ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ♫
最初の二つは畑の野菜で、スズナはカブ、スズシロはダイコンです。残りの五つは田んぼにある草で、セリ(芹)、ナズナ(通称ぺんぺん草)、ゴギョウ(母子草)、ハコベラ(ハコベ)、ホトケノザ(仏の座)です。
この中で多くの人に勘違いされているのがホトケノザ(コオニタビラコ)。普段私たちが道端や畑で目にするのは、シソ科のホトケノザです。しかし七草のホトケノザは、キク科の「コオニタビラコ」という地味で小さな草です。街じゅうどこにでも普通に生えている「オニタビラコ」とは違い、農閑期の稲刈り後から代かき・田植え前までの田んぼで、ひっそりと生えています。タビラコ(田平子)の名の通りロゼット状(放射状)に田んぼで平たく葉を広げる姿が見られます。
土地の造成の影響などもあり、近年では絶滅危惧種に指定している県もあるほど見つけにくい草になっています。稲が植わっていない時期に田んぼに出かけ、七草のうちの五つの草を見つけられたら、そこは昔ながらの土が残っている田んぼなのかもしれません。
春の七草。左からスズナ、スズシロ、セリ、ホトケノザ、ゴギョウ、ハコベラ、ナズナ
田んぼソムリエ 林 鷹央(はやし たかお)
三重県生まれ、東京育ち。「田んぼの生きもの調査」を通して全国の農村・学校で生物多様性や農・里山文化の意義を伝える。著書に『田んぼソムリエになる!』(安心農業株式会社刊)がある。