ほっと一息

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2023.11.20

みんなのSDGs 田んぼソムリエになろう 「ふゆみずたんぼ」に雁が来る!

JA広報通信2023年11月号

田んぼソムリエ●林 鷹央

 冬にやって来る鳥を「冬鳥」といいます。雁(がん)やカモは水辺にやって来る代表的な冬鳥です。夏はシベリアや欧州などの冷涼な地域にすんでいますが、冬は寒さを避けるためにV字編隊飛行で長旅をしながら、日本にも多く飛来します。
 雁は「がん」または「かり」と読みます。聞き慣れない方々が多いと思いますが、漢字の部首の厂(がん垂れ)の呼び名は雁からきているくらいで、昔の日本人にはなじみの鳥だったのです。
 しかし、近年は見ることがまれな鳥になってしまいました。雁はカモよりはずっと大きく、警戒心が強いため、肉食哺乳類などに襲われにくい広い水辺が必要です。戦後間もなくまでは、池や沼以外にも、水がたまった田んぼがたくさんありました。しかし、農作業の効率が悪いため、全国的に水はけを良くするための整備が行われました。その結果、乾いた田んぼばかりになり、雁たちが安心して休める場所がなくなってしまいました。
 そんな中、生きものと共生する農業の一つとして、冬の田んぼに水を張り、雁たちが再び飛来するようにしたのが「冬期湛水(たんすい)」で、「ふゆみずたんぼ」と呼ばれ親しまれています。2005年、宮城県大崎市の蕪栗(かぶくり)沼と周辺の「ふゆみずたんぼ」が国際的な湿地保全の取り組みである「ラムサール条約」に登録されました。


マガン

 

 

宮城県の「ふゆみずたんぼ」

 

田んぼソムリエ 林 鷹央(はやし たくおう)

三重県生まれ、東京育ち。「田んぼの生きもの調査」を通して全国の農村・学校で生物多様性や農・里山文化の意義を伝える。著書に『田んぼソムリエになる!』(安心農業株式会社刊)がある。