ほっと一息

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2023.10.22

なくそう食品ロス 個人商店で買い物をしてみよう

JA広報通信2023年10月号

食品ロス問題ジャーナリスト●井出留美

 

 兵庫県芦屋市と東京・六本木で食料品を扱う店「グランドフードホール」を運営する岩城紀子さん。彼女があるテレビ番組に出演した際、欧州には「Buying from artisans(職人から物を買え)」という言葉があると話していました。ハムはハム、パンはパンの個人商店で買うべきだと、幼い頃から教えられるそうです。地域の職人を大切にしなければ店も技術も失われてしまう。買うことで店を支えるのです。

 番組が放送されたのは2020年5月21日のこと。私は共感し「これからは個人商店で定期的に買い物しよう」と決意しました。肉は精肉店、魚は鮮魚店、お茶やのりは茶店で。どの店も互いに離れているから雨の日や忙しい日は面倒です。でも週に1回程度なら続けられます。通ううちに私の名前を覚えてくれました。

 鮮魚店は、豆腐店から手作り豆腐を仕入れています。数量限定なので、お造りなどの注文と合わせて電話で予約するようになりました。通ううち、少しおまけしてくれるようになりました。精肉店で買うとトレーがないのでプラスチックごみが減ります。容器を持って行くとポテトサラダを量り売りしてくれます。茶店で買うのりはパリッとしていて家で作る手巻きずしがおいしくなりました。

 スーパーやコンビニエンスストアだと1カ所で何でもそろうので便利ですよね。ただ、豊富な種類があるので無駄買いしがちです。レジに人がいても会話は少ないのではないでしょうか。

 明治学院大学の神門善久先生は著書『日本の食と農』(NTT出版)で「かつての八百屋や魚屋は、単に食材を売る場所ではなかった」と書いています。調理法や献立の相談など、そこには親密なコミュニケーションがあったのです。

 個人商店ならこれと決めた物を買いに行くので無駄買いが減り、プラスチック容器や包装のごみも減ります。たまには試してみませんか。

 

食品ロス問題ジャーナリスト 井出 留美(いで るみ)

 

株式会社office3.11代表取締役。博士(栄養学/女子栄養大学大学院)修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。『食べものが足りない!』『SDGs時代の食べ方』『捨てないパン屋の挑戦』など著書多数。