ほっと一息

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2023.10.04

介護ハンドブック 介護疲れは早期発見・早期回復を

JA広報通信2023年9月号

介護者メンタルケア協会代表●橋中今日子

 

 介護に限らず、忙しいときほど疲れのサインを見過ごしやすいものです。介護疲れと聞くと、抑うつや、寝込んで動けなくなる状態を想像されるかもしれませんが、そのような状態に陥るまでに体はさまざまな形で疲れのサインを出しています。

 

大好きな本が突然読めなくなった!

 Hさん(女性・50代)のケースです。Hさんは、認知症の母親を介護する父親を手助けするため、車で30分の距離の実家に週1、2回通っています。実家通いは2年以上続き、Hさんはややおっくうに感じていましたが、「私が手伝っているのは家事程度で、介護といえるほどのことはしていない。もっと大変な人もいる」と自分に言い聞かせていました。
 ある日、Hさんは久しぶりに自宅でゆっくり過ごす時間が取れました。大好きな推理小説を読もうとすると、目が滑って1ページも読み進められません。読書が生きがいだったHさんは、ショックを受けてしまいました。

 

 十分な睡眠と、安心して過ごす時間をつくろう

 Hさんの状態は介護疲れのサインです。文章が頭に入らない、忘れ物やミスが増える、箸や食器をよく落とす、何を食べたいかすぐ言えない、大好きだった趣味に関心がなくなる……。このような小さなことが疲れのサインです。私自身、仕事をしながら家族3人の介護を1人で担っていたときは、介護の申請書類の記載ミスを繰り返し、食器を洗うたびにお皿を割り、車も傷だらけでした。「大したことはしていない」と、自分を過小評価することも、疲れているときに陥りがちな思考パターンです。
 介護疲れは、早期発見と早期回復がポイントです。ある日突然動けなくなってからでは回復に年単位で時間がかかってしまいます。疲れのサインに気が付いたら、まずは睡眠時間を確保しましょう。そして、お風呂にゆっくりつかる、気の置けない友人と話す時間を取るなど、自分が安心して過ごせる時間をつくってみてください。