ほっと一息

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2023.09.23

お米をおいしく楽しもう 同じ品種名でも味が違う?

JA広報通信2023年9月号

五ツ星お米マイスター●小池理雄

 

 よくお客さまから「同じ○○県のコシヒカリなのに、スーパーと精米店では何が違うの?」という質問があります。その答えの一つが仕入れ先の違いです。

 あらためて言うまでもなくお米は農産物です。野菜と同じく、収穫された場所や栽培方法、仕入れた生産者により、味が異なります。

 ただ、大規模な店では均一の品質で大量のお米が必要なので、生産者ごとや田んぼごとではなく、広範囲で収穫されたお米を集めざるを得ません。そうなると栽培方法や生産者による味の違いというのは打ち出しにくく、「○○県のコシヒカリ」というざっくりした商品にならざるを得ないのです。

 一方、精米店は、仕入れ先の規模が比較的小さい場合がほとんどです。それは精米店もまた経営規模が小さく仕入れ量が少ないからです。そして結果として、精米店では生産者や栽培方法などを切り口にした細かい区分けで仕入れができます。

 精米店の仕入れ先は卸業者が見つけてきた地域限定のお米、知り合いから紹介された篤農家のお米、生産者が直接売り込んできたお米、商談会で知り合った若手生産者のお米、自治体が精米店をターゲットにして売り込んでくるお米といったパターンです。

 こういったご縁で精米店はお米を仕入れています。このご縁は偶然ではなく、味の分かる精米店に扱ってほしいという生産者や自治体の願いが形になったものなのです。

 例えば、国内のお米コンテストで常に評価されているような生産者のお米や、非常に水がきれいで地元でもかなり有名な区画で収穫されるが数は限定されているというようなお米があります。都道府県単位で開発したような「つや姫」や「新之助」といった品種は、最初は精米店で販売を開始します。それは、まずは精米店での評価が高くなければこの先の販売がおぼつかないことを各都道府県が知っているからです。

 このような逸品を各精米店は必ず一つは持っているのです。

 

五ツ星お米マイスター 小池 理雄(こいけ ただお)


小池精米店三代目店主。1971年東京・原宿生まれ。大学卒業後、出版社、人事制度コンサルティングファームなどを経て、2006年に小池精米店を継ぐ。それまでの社会経験を生かし、新しいお米屋さんのあり方を常に模索している。