ほっと一息

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2023.09.15

ゴボウ 皮に味あり、栄養あり

JA広報通信2009年9月号
エッセイスト 神山 真理

 

 息子たちの弁当のおかずに、濃いめに味つけたきんぴらごぼうをよく入れます。歯応えがあって、ご飯によく合うと、残さず食べてきます。また、夫は豚汁のゴボウが好き。「これがうまいんだ」とかみしめています。

 献立に年中登場するゴボウ。その栄養的な特長は、食物繊維が多量に含まれていることです。食物繊維のイヌリンは水分を吸収し、腸の運動を活発にします。同じく食物繊維のリグニンは整腸作用とともに、発がん物質を体外に排出させる作用があるといわれています。リグニンは切ってから時間がたつごとに増えるので、ささがきにして、少し時間を置いてから調理するといいでしょう。

 ところで調理の際、きれいに仕上げようと丁寧に皮をむくことはおすすめできません。なぜなら、ゴボウは皮付近に糖やタンパク質、アミノ酸が集中しているからです。なかでもうま味成分のグルタミン酸の量は、内側より皮付近の方が多く含まれています。

 また、あく抜きのために、水にさらすこともおすすめできません。水にさらせばいくらかは白くなりますが、カルシウム、カリウム、アミノ酸などの栄養素が水に溶け出してしまいます。

 ゴボウをおいしく食べるには、たわしで洗うか、皮をそぎ落とす程度で十分。皮が残って少々黒い仕上がりの方がおいしく、栄養にも富んでいるというわけです。  そしてもう一つ、柳川鍋や、筑前煮にゴボウが入っているように、ゴボウには魚や肉の匂いを消す働きもあります。ゴボウの香りを楽しみつつ、具も汁もたっぷりと食べましょう。

 

 

参考文献

『野菜&果物図鑑』(新星出版社)

『野菜の手帖』(講談社)

『クスリの食べ物』(西東社)

『食の知恵袋事典』(アスコム)

『新食品成分表〈2007〉』(一橋出版)