ほっと一息

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2023.09.03

野菜のルーツ 特異な成分含む――アシタバ(セリ科)

JA広報通信2009年9月号

植物ライター ●岡田比呂実

 

 今日摘み取っても、明日には新芽を伸ばすというほど旺盛な生育力。それがアシタバ(明日葉)の名の由来というのはよく知られた話です。

 伊豆諸島、関東地方南部、東海地方、紀伊半島などの海岸地帯に自生する多年草で、特に八丈島などで古くから常食されてきました。

 江戸中期に発行された『大和本草』(1709年)にも、「八丈の民多くうえて朝夕の粮(かて)に充つ」と記載されています。また、江戸後期の洒落本『甲子夜話』(1804~17年)には、「これを食せば疱瘡(ほうそう)を免かる」とあり、当時すでに、アシタバの健康効果が伝えられていたことが分かります。ただし、『農業全書』(1697年)などの農書にはその名が見当たらず、広く栽培されることはなかったようです。

 現在では各地で生産されるようになり、家庭菜園で作る人も増えました。しかし、今も八丈島をはじめとした伊豆七島が主産地であることに変わりはありません。

 アシタバは、ミネラルやビタミン類、食物繊維などが豊富な緑黄色野菜です。葉を折り取ると、切り口から黄色い液汁がにじみ出ます。八丈島では昔からこの汁を、虫刺されや傷の化膿(かのう)止めに利用してきたとか。

 アシタバの汁には、強い抗酸化作用を持つカルコンという化合物が、特異的に含まれているそうです。カルコンには抗潰瘍(かいよう)作用、抗菌作用、抗血栓作用、制がん作用などがあることが分かっています。

 調理法は、湯がいてからおひたしやあえ物、いため物などに。あくが気になる場合は、湯がいた後、しばらく水にさらします。天ぷらにすると、あくはほとんど気になりません。

 最近では、葉を乾燥させたアシタバ茶や、粉状にしたアシタバパウダーなどの加工品も市販されています。