ほっと一息

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2023.08.08

お米をおいしく楽しもう お米からはごみが出ない

JA広報通信2023年8月号

五ツ星お米マイスター●小池理雄

 

「お米からごみは出ません!」。いつも私が消費者に訴えていることです。

 ごみが出ないということは、資源を無駄にしないということで、いかに日本人が古くからお米と共に歩んできたかの証しなのです。

 例えばぬか。日本人のソウルフードでもあるぬか漬けに欠かせません。しかしそれ以外の使用方法もあります。米油はぬかから抽出されます。食用だけではなくインク・化粧品・せっけんなどにも活用されているのです。最近ではエステ業界でも活用されています。酵素風呂といって砂風呂のような蒸し風呂ですが、これはぬかと木くずを混ぜて発酵させているのです。

 産地では稲刈り時にわらともみ殻が排出されます。これらは稲刈り後に田んぼにまけばそのまま土に返ります。

 しかし、それ以外にもわらはカツオのたたき、園芸で使う敷きわら、神社で使うしめ縄、大相撲の土俵で使う俵などに使われます。

 もみ殻は柔らかい物を運ぶ際に木箱や段ボールに詰めて緩衝材として使われますし、最近ではもみ殻燻(くん)炭といった燃料が作られています。

 収穫されたもみが全て玄米として出荷されるわけではありません。お米は農産物なので、穂に実ったもみの大きさや品質はばらばらです。その中の規格外なお米は米菓やお酒の原料などになるのです。

 精米店で精米すると、ぬか以外の物も出てきます。精米過程で割れてしまったお米や黒い斑点が付いたお米などの着色粒です。これらは私の店ではスズメの餌として販売しています。

 いかがでしたでしょうか? お米からはごみが出る余地がほとんどありません。お米との付き合いが古いからこそ、日本人はお米を100%活用できる方法を自然と編み出しているのです。

 唯一出るとしたら食べ残しくらいです。この食べ残しがなければお米はごみゼロをほぼ達成できるのです。

 

 

五ツ星お米マイスター 小池 理雄(こいけ ただお)


小池精米店三代目店主。1971年東京・原宿生まれ。大学卒業後、出版社、人事制度コンサルティングファームなどを経て、2006年に小池精米店を継ぐ。それまでの社会経験を生かし、新しいお米屋さんのあり方を常に模索している。