ほっと一息

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2023.07.24

介護ハンドブック 健康に自信がある人でも、介護リスクが

JA広報通信2023年7月号

介護者メンタルケア協会代表●橋中今日子

 

 平均寿命が延び、人生100年時代が到来しました。健康に気を使い、積極的に運動している高齢者も増えています。しかし、70代後半から急激に増える脊柱圧迫骨折は、健康的な生活を心がけている人でも突然発症し、介護が必要になることがあります。

 活動的な母親が激変、悲観的に

 Kさん(女性・50代)の母親(70代)は、登山が趣味です。毎朝の散歩を欠かさず、卓球の同好会にも参加しています。ところが、ある朝突然、寝返りも打てないほどの激しい腰痛に襲われ、脊柱(背骨)圧迫骨折と診断されたのです。手術の必要はないものの、コルセットを着用して自宅で過ごすことになりました。脊柱圧迫骨折の受傷直後は激しい痛みが特徴で、1~2週間ほど寝たきりになることもあります。健康に自信があっただけに心理的ショックも大きいのか、前向きで明るい性格だった母親は「痛い痛い! 死んだ方がまし!」と叫び、「迷惑をかけて申し訳ない」と泣き続けます。

 

 支援者とすぐにつながる心構えを

 母親の悲観的な言動に心を痛めていたKさんは、友人の勧めで地域包括支援センターに連絡してみました。すぐに職員が来訪し、介護保険の申請と、訪問介護、訪問リハビリサービスをすぐに利用できるように調整してくれました。
 母親は、介護サービスを受けることに抵抗があったようですが、次第に「ヘルパーのAさんも、登山が趣味なんですって!」と会話を楽しむようになり、3カ月後には歩けるまでに回復しました。今では「山は無理でも、リハビリを頑張ってハイキングに行きたいわ!」と前向きな発言も増えてきたそうです。
 元気いっぱいだった家族に突然介護が必要になることは珍しくないものです。介護を予防する対策も大事ですが、「誰もが突然介護に直面する」ことも心に留めておいてください。最初の相談窓口は「地域包括支援センター」です。電話番号を調べ、家族と共有しておきましょう。