ほっと一息

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2023.05.21

お米をおいしく楽しもう お米の魅力を正しく伝えたい

JA広報通信2023年5月号

五ツ星お米マイスター●小池理雄

 

 お米はテレビ番組の特集で取り上げられることがあります。私の経営する精米店の場所は東京・原宿で、テレビ局や制作会社が比較的近いこともあり、出演のお声がけをいただくことがあります。ただ、テレビで取り上げられるお米の内容は、私たち米業界の人間が伝えたいことと若干の齟齬(そご)があるため、出演のたびにそのギャップに頭を悩ませています。

 番組的に求められるのは「分かりやすさ」です。

 例えば「炊飯方法」。よく「簡単においしく炊飯できるこつを教えてほしい」という要望があります。しかし炊飯は調理です。手間を惜しまないことがおいしいご飯への近道です。それを省略して得られるおいしさとは、果たしてそのお米が持っている本来の味なのか、いつも悩んでいます。

 例えば「お米の味」。その味を見える化する手法に「食味マップ」があります。横軸に食感(硬め、軟らかめなど)、縦軸に味(甘い、あっさり・さっぱりなど)を取り、四つの領域を設け、そこにお米を品種別にマッピングします。知名度のあるお米では「硬め・さっぱり」の領域に当てはまる品種は少ないのですが、それだとバランスが悪いため、マイナーなお米を取って付けたようにそこに当てはめる場合があります。

 分かりやすさを求めるが故に、見せ方、取り上げ方が極端になり、裏腹に細かい話、例外的な話が省略されることもあるのです。

 ただ、こういった体験をすると、消費者目線で見たときにお米に何が求められているのか分かります。お米の味は淡白で、見た目も地味です。そんな素材に視聴者から関心を持ってもらうにはどのようにすべきか。そこでテレビの制作側の皆さんは悩んでいるのです。本来、精米店をはじめとした米業界の人が悩むべき課題でもあるのです。

 このような「番組制作の視点」を意識してみると、また新しい角度からお米の魅力を発掘できるかもしれませんね。

 

 

五ツ星お米マイスター 小池 理雄(こいけ ただお)

小池精米店三代目店主。1971年東京・原宿生まれ。大学卒業後、出版社、人事制度コンサルティングファームなどを経て、2006年に小池精米店を継ぐ。それまでの社会経験を生かし、新しいお米屋さんのあり方を常に模索している。