ほっと一息
2024.08.07
シネマレストラン 胃袋をつかむ食の映画 「南極料理人」
JA広報通信2010年8月号
●佐藤白君
残暑厳しい季節に、酷寒の地の映画はいかがでしょうか。物語の舞台は、生物はおろかウイルスさえ生存できない、平均気温マイナス54度の南極。主人公の西村は、そこで働く南極観測隊員に料理を作るため、妻子を残して南極ドームふじ基地に赴きます。
見知らぬ者同士、8人の男たちが一つ屋根の下で寝食を共にするという、究極の単身赴任生活。時に1万4000km離れた家族を思い、泣きたい日もあれば怒りもする…。そんななか、食事は誰にとっても素の自分に戻れる特別な存在。伊勢エビや和牛、フォアグラを使った高級料理に心躍り、日本にいたら当たり前のように食べられるおにぎりと豚汁に心安らぎ、ラーメン一つでけんかもできる!
任期満了が近づくにつれ、食卓を通じて見える不思議な結束感は、ほほ笑ましい限り。どんなときでもどんな環境でも、心のこもったおいしいものを食べると元気になれる、そんなことを感じさせてくれる快作です。