ほっと一息
2024.07.14
皆で仲良く100歳食 暑気あたりを防ぐウリ類
JA広報通信2009年6月号
食文化史研究家●永山久夫
水菓子の恋しい季節です。昔の人は、桃や梨、ウリなど、水分が多くて甘い果物のことを「水菓子」と呼んでいました。
この水菓子は、江戸時代になると栽培技術も向上。品種も増え、夏の人気商品として、ちょっとしたブームを呼びます。
特に人気を呼んだのがマクワウリとスイカです。町には包丁で適当な大きさに切って売る商売人も出現し、スイカの場合は「スイカン、スイカン」とか「スイカンヤー、スイカン」などと呼び売りしていました。面白い川柳も残っています。
「井戸の瓜でっち大骨折って上げ」
井戸につるして冷やしたウリを、奉公人が苦労しながら引き上げているという意味です。
「大騒ぎ井戸へ西瓜を下女落し」
こちらはスイカの川柳で、井戸の中へドボーンとスイカを落として、大騒ぎになっています。
古くからウリ類は、日本人の大好物でした。ウリ科のヒョウタンが縄文時代の遺跡から出土していますし、マクワウリの種子は弥生時代の遺跡から発見されています。邪馬台国の女王・卑弥呼も甘いウリに目を細めながら食べていた可能性があります。
そして奈良時代の『万葉集』にも山上憶良の「子らを思う歌」の中に次のような一節があります。
「瓜はめば子ども思ほゆ」
ウリを食べると、子どものことが思われてならないという内容で、甘い水分をたっぷり含んだウリは、子どもたちも大好物だったのでしょう。 ウリという名称は、のどを「うるおす」からきたという説があるほど水分が多く、約90%が水分です。暑さによる体のほてりを鎮める効果があるとされます。スイカの赤い色素はリコピンで、夏バテを防ぎ、細胞の老化やがんの予防にも役立つといわれています。