ほっと一息

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2024.06.15

介護ハンドブック 自覚しにくい介護疲れ。思わぬ不調にも

JA広報通信2024年5月号

介護者メンタルケア協会代表●橋中今日子

 

 家族に介護が必要になると「私が守らなければ」と責任感や義務感を強く感じることがあります。これ自体は悪いことではありませんが、「しっかりしなければ」と気負うあまり、介護疲れに気付かないまま、心身の思わぬ不調として疲労が表面化することがあります。

 忘れ物やミスを連発

 九州在住のMさん(男性・50代)は、車で30分ほど離れた実家で暮らす80代の両親をサポートするために、毎週末実家に通って2年以上たちます。Mさんは最近、両親の受診日を間違え、財布や車のキーをなくすといったうっかりミスが増えています。先日は、取引先との大切なアポイントを忘れるという大失態を犯してしまいました。あまりに頻繁にミスが続き、Mさんは「どこかおかしいのでは?」と不安になって受診し、念のため脳ドックも受けましたが特に異常は見当たりません。

 

 大したことはしていない、に注意

 「通院や買い物、家事を手伝っているだけで、介護といえるほど大したことはしていない」とMさんは話しますが、本来なら心身を休めるはずの週末を、2年以上も実家通いに費やしているのですから、疲れが出ないわけがありません。私は「ご両親とケアマネジャーに相談して、少なくとも隔週で休める体制を作りましょう」と提案しました。Mさんは納得していない様子でしたが、実家に戻らずに自宅でゆっくり過ごすと決めた最初の週末に夕方まで眠り続け、自分でもびっくりしたそうです。実家通いを隔週に減らして3カ月ほどたって、忘れ物やミスが大幅に減ったと報告してくれました。Mさんがミスを繰り返していたのは、疲労によって集中力や記憶力に影響が出ていたからだったのでしょう。
 介護は長期化する可能性が高いため、休養を後回しにしていると、思わぬ影響が出ることがあります。うっかりミスが増えたときは「疲れのサインかも?」と捉えて、回復する時間を確保しましょう。