ほっと一息

ほっと一息

2024.06.13

なくそう食品ロス 賞味期限は2割以上短くなっている?

JA広報通信2024年5月号

食品ロス問題ジャーナリスト●井出留美

 

 海外在住の女性から「顆粒(かりゅう)だしのもとは賞味期限が切れてからどのくらい大丈夫なんでしょう? 判断の目安はありますか?」と連絡をもらいました。
 あくまで私自身の場合と断った上で「開封したときサラサラしていたら使い、固まっていたら使うのをやめる」と答えました。サラサラしているのが本来の状態だからです。メーカーによって賞味期限は異なりますが、1年半程度が多いようです。
 東京農業大学で食品保存に関する研究をしていた徳江千代子先生は「本来の賞味期限より2割以上短くなっている」と話しています。消費者庁が賞味期限を決めるときの安全係数を「0・8」としているためです。
 例えば、10カ月間おいしく食べられるカップ麺があるとしましょう。企業の多くは10カ月で賞味期限を印字しません。安全係数という1未満の数字をかけ算します。国は0・8以上を推奨していますから、10カ月に0・8をかければ8カ月となります。企業によっては0・5や0・6、0・7を使うケースもあるようです。
 なぜ安全係数をかけ算するのでしょう? 加工食品は、同じように作られても個体差が生じます。製造工場を出た後は、直射日光が当たる店頭で売られたり、真夏に車のトランクに入れっ放しにされたりするかもしれません。さまざまなリスクや個体差を考慮し、安全係数をかけて短くしているのです。
 徳江先生が「2割以上短い」と言う賞味期限。賞味期限に1・2をかけ算すれば本来の賞味期限が分かります。1年半の賞味期間がある顆粒だしのもとであれば、1・2をかけ算すれば約1年9カ月となり、賞味期限が切れた後、少なくとも3カ月は大丈夫ということになります。賞味期限はおいしさの目安であり品質が切れる日付ではありません。そもそも期限内に使い切れる量を買い、最後まで使い切る習慣が大切ですね。

 

 

食品ロス問題ジャーナリスト 井出 留美(いで るみ)


株式会社office3.11代表取締役。博士(栄養学/女子栄養大学大学院)修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。『食べものが足りない!』『SDGs時代の食べ方』『捨てないパン屋の挑戦』など著書多数。