ほっと一息

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2024.05.07

食のはなし  豆腐

JA広報通信2007年4月号

エッセイスト神山 真理 

 

 子どものころ、町が夕焼けに染まり始めると、プーピープーという豆腐屋のラッパが聞こえ、どこからともなく、鍋を手にしたおばさんたちが豆腐屋の自転車の周囲に集まってきたものです。今ほど肉や魚が豊富ではなかった時代、豆腐は日本人の大切なタンパク質源でした。

 豆腐の原料、大豆は「畑の肉」と呼ばれ、良質のタンパク質と脂質に富んでいます。その大豆を水でふやかして粉砕し、煮て、こして豆乳を取り、凝固剤で固めたものが豆腐です。大豆と水だけで作られた豆腐の中には、大豆の栄養素の7割が移行しているといわれます。だから豆腐は栄養価が高く、消化吸収に優れているのです。

 しかも、生活習慣病予防に効果があるさまざまな成分が含まれています。まず、大豆特有の栄養素である大豆サポニンや、脂肪酸のリノール酸には、コレステロールの上昇を抑える働きがあるので、動脈硬化の予防に役立ちます。

 また、記憶力や学習能力の向上、老化防止に効果的なレシチンという物質も含まれているので、中高年には格好の食品です。

 さらに最近注目されているのは大豆に含まれているイソフラボンという物質です。これはがん細胞の増殖を抑制する作用があり、特に乳がんには効果的ともいわれています。

 ところで、絹ごし豆腐と木綿豆腐の違いをご存じですか?

 絹ごしは豆乳をこして、型に流して固めたもの、木綿は一度凝固させたものを崩し、重しの力で成形したものです。