ほっと一息

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2024.04.17

野菜のルーツ 4000年前から栽培――ソラマメ(マメ科)

JA広報通信2007年4月号

 植物ライター ●岡田比呂実

 

 ソラマメは爽やかな若緑がうれしい初夏の豆です。漢字で書くと「空豆」。さやが空に向かって直立するようにつくのが、名の由来のようです。「蚕豆」と書く場合もありますが、これは豆の形が蚕の繭に似るからとも、蚕が繭を作るころに実るからともいわれています。

 原産地は地中海沿岸、または北部アフリカや西アジアなど諸説があり、野生種は今も確認されていません。しかし、人類にとって最も栽培歴の古い作物の一つであることは間違いがありません。エジプトでは墳墓の棺の中からソラマメが発見されており、4000年前には既に栽培されていたと考えられています。

 日本への渡来は736(天平8)年、来日したインド僧の菩提仙那が行基に伝え、試作されたのが最初とされています。

 現在ソラマメといえば、未熟なさやを若採りしてみずみずしい豆を食べるのが主流ですが、かつての利用法はかなり違っていました。江戸時代以降は、完熟した乾燥豆を麦と合わせて米の代用に炊いたり、みその原料とするなど、かなり重要な穀物として利用された記録が残っています(『農業全書』1697年刊)。

 現在日本で生産されるソラマメは、未熟な豆を食べる青果用品種が中心。ほかに堅く成熟してから収穫する乾燥豆用品種がありますが、国内での生産はほとんどありません。乾燥豆はお多福豆の名で流通し、多くは中国からの輸入物です。

 乾燥豆は、甘く煮つけたり、油で揚げてフライビーンズなどに加工します。ちなみに最近日本でもおなじみの中国の調味料、豆板じゃんも、ソラマメが主な原料です。私たちは、それと知らずにソラマメの加工品を日常的に口にしているのです。