ほっと一息

ほっと一息

2024.03.20

資産管理の法律ガイド 親族法について その6

JA広報通信2024年2月号

JA全中・JAまちづくり情報センター 顧問弁護士●草薙一郎

 

 今回は夫婦財産制について説明します。

 民法755条は、夫婦は婚姻の届け出前に、その財産について別段の契約をしないときには、その財産関係は民法760条以下によることを規定しています。
 民法760条は「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する」とあり、同762条1項では「夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方単独で有する財産をいう。)とする」、同2項では「夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する」と規定します。
 つまり、夫婦が婚姻届前に何らかの契約をしないときは、上記の760条、762条(ちなみに761条はすでに説明した夫婦の日常家事に関する連帯責任の規定)によることになります。この762条1項について、通説判例は夫婦別産制を示すものと考えています。
 婚姻中に夫の名前で取得した財産は夫のものとするのが原則ですが、妻の協力があってもそう考えていいかの問題があり、協力の程度では共有とするべきであるとか、離婚のときの財産分与で清算するから夫名義でよいとするとか、いろいろな考え方があります。
 婚姻費用として夫の収入から拠出した金銭に余剰があるとき、その部分は夫婦の共有財産とするとの考えもあります。夫の名前で入手したとき、その入手したものを夫が妻の考えに反してでも処分が可能かの問題が、夫婦の信頼関係が欠如したときに発生するようです。
 なお、760条は夫婦が別居したときに婚姻費用の分担金として問題となってくる根拠条文です。