ほっと一息
2024.01.30
資産管理の法律ガイド 親族法について その5
JA広報通信2024年1月号
JA全中・JAまちづくり情報センター 顧問弁護士●草薙一郎
前回に続いて、夫婦の日常家事に関する連帯責任(民法761条)の説明をします。
夫婦の一方が日常家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方はこれによって生じた債務について、第三者に対して連帯責任を負うという内容で、一方の行為によって他方の責任が生じる根拠は、夫婦は日常家事の範囲で他方の代理権を有するからとされています。そのため、何が日常家事なのかが重要となります。裁判所は夫婦間の事情とともに、行われた法律行為を客観的に見て判断するべきだとしています。
しかし、夫婦の一方の行為が日常家事か否かは、夫婦内部で考えている内容と、第三者がそれをどう考えるかは必ずしも一致しません。夫婦間の事情では日常家事とはいえないとしても、第三者が見ると、客観的には日常家事といえるのではないかという場合、第三者の保護を考えるべきではないかの問題が生じてきます。この点については、前述したように夫婦の一方は日常家事に関して、他方の代理権を有しているとの法的根拠から、表見代理(民法110条)の適用の議論があります。
代理権の範囲を超えている代理行為については、本来、その法的効果は本人に帰属しないのですが、その代理行為が本来の代理権の範囲内と信じるに正当な場合には、それを信じた第三者を保護し、代理行為の法的効果を本人に帰属させるとするのが表見代理です。これを日常家事に応用しようとしたものです。妻が夫の不動産を平素から夫に代わって処分していたなどのときに議論されます。ただ、裁判所は、その行為は第三者が日常家事として信じるに正当事由があるといえるかという視点で判断しています。