ほっと一息
2023.12.28
資産管理の法律ガイド 親族法について その4
JA広報通信2023年12月号
JA全中・JAまちづくり情報センター 顧問弁護士●草薙一郎
今回は日常家事に関する債務の連帯責任について説明します。
民法第761条は「夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯して責任を負う。ただし、第三者に対して責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない」と規定しています。
妻が家族の食事のためそばの出前を注文したとき、夫にも代金を支払う責任があるなどのケースです。法律行為の法的効果はその行為をした人に及ぶのが原則ですが、夫婦の経済活動は共同性があるとの前提で、夫婦の一方の法律行為の効果がもう一方にも及ぶことにしたのがこの条文です。
そして、法的にどうして他の一方に法的効果が及ぶかについては、日常家事について夫婦は他方を代理する権限を有しているからだと考えられています。
そうすると、日常家事とは何かが大切となります。この点は明確な定義はないのですが、夫婦ごとに日常家事の範囲は異なりますので、夫婦間の事情を基準とするべきですが、客観的に見て行為の内容などからも考えるべきだとされています。
生活のためクレジットをすることは日常家事といえると思いますが、それが個人的なものであれば日常家事とはいえないでしょう。あるいは、非常に高額なときも同様でしょう。
不動産の売却については、一般的には日常家事とはいえないと考えます。なお、責任は負わない旨の予告は、取引の相手方に対してするべきだとされています。
次回もこの続きを説明します。