ほっと一息

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2023.12.21

介護ハンドブック 終活をしてくれない母親をどうしたらいい?

JA広報通信2023年12月号

介護者メンタルケア協会代表●橋中今日子

 

 家族の介護に備えて、事前に情報を集める方も増えています。しかし「早く準備しておかないと!」と焦り過ぎると、双方の関係が悪化してしまうこともあります。

 終活の話題を拒む母親

 関西地方に住むHさんの母親(70代)は、3年前に父親が急死してから1人暮らしです。Hさんは、父親の治療をどこまでするか、葬儀は誰を呼びたいかなど、事前に意思確認ができていなかったことが心残りでした。母親は友人と旅行に行くなど元気でいてくれるのですが、終活には手を付けていません。Hさんは終活ノートを母親にプレゼントし、「もし介護が必要になったら、家がいい? 施設はどう思う?」と、折を見て話題に出しますが、母親から「辛気くさい話はやめてよ!」と嫌がられ、終活の話題を拒絶されるようになりました。

本人の好奇心を刺激する話題から

 Hさんには「終活の話題はいったん横に置いて、お互いの好きなことについて話題に出してみませんか?」と提案しました。好きな歌手や俳優、子どもの頃からの大好物といった話題です。アドバイスを受けて、Hさんは、母親から無理に聞き出そうとする前のめりな姿勢を改め、まず自分の好きなことについて話し、続いて母親にも尋ねる機会を増やすようにしてみました。しばらくして「最期の晩さんに何が食べたいか」と、お互いが好きな料理を挙げながら盛り上がったことをきっかけに「お母さんの好きなことを大事にしたいから、もし準備しておいてほしいことがあったら、念のためにメモしておいてね。私、迷わなくて助かるわ」と軽めに話しかけてみたところ、「それもそうね」と、以前のような拒絶的な雰囲気は和らいだそうです。
 人に動いてほしいときには、恐れや不安を刺激するよりも、本人がワクワクするような楽しい話題の方が行動につながることを思い出してみてください。