ほっと一息

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2023.09.27

永山久夫の健康万歳! ホクホク甘いサツマイモ

JA広報通信2023年9月号

食文化史研究家・日本の長寿食研究家●永山久夫

■ 秋は何といってもサツマイモ

 最近、都内で焼き芋を扱う店が増え、若い女性を中心になかなかの人気です。自然の程よい甘味に加えて、ダイエット効果でも人気を増しているようです。
 サツマイモの切り口からにじみ出る白い乳液はヤラピンという成分で、排せつをスムーズにする作用があり、豊富に含まれている食物繊維と共に便秘の予防や改善、それに日本人に増えている大腸がんの予防に効果を発揮するといわれています。
 食物繊維の供給は、元気な腸内細菌を増やすためにも欠かせません。人間の免疫力のほとんどは健康な腸の働きによることが分かっており、ウイルスや細菌に負けないためにも食物繊維は重要です。
 江戸の町娘の好物に「芝居、こんにゃく、芋、カボチャ」がありました。
 芝居以外は全て食物繊維の多い食べ物が中心で、彼女たちは本能的にスリムな体形を保つ上でこれらが役に立つと考えていたのでしょう。
 サツマイモは細胞の酸化、つまり老化を防ぐベータカロテンが多く、若さを保って長生きする上でも重要なビタミンが多く含まれています。ビタミンCも豊富で、100g中に29mgも含み、リンゴやブドウ、メロンなどよりも多いのです。ビタミンCは免疫力を強化する働きがあり、風邪を防いだり、治りを早くする作用も期待されています。
 お肌の若さを保って美しくするコラーゲンの生成にもビタミンCは不可欠で、不足すると老化が進んでしまうともいわれています。それだけでなく老化防止のビタミンとして知られるビタミンEもたっぷりです。
 こう見てきますと、サツマイモは長寿食としても、立派な実力派であることが分かります。ミネラルでは、心臓の若さを保つマグネシウムや血圧の安定に役立つカリウムなどが含まれています。ただ、サツマイモは戦後の食糧難の時代に主食の役目を果たしたほどカロリーもしっかり含まれているので、食べ過ぎは避けた方が賢明ではないでしょうか。

 

食文化史研究家・日本の長寿食研究家 永山 久夫(ながやま ひさお)

1934年福島県生まれ。食文化研究所、綜合長寿食研究所所長。古代から明治時代までの食事復元研究の第一人者。長寿食や健脳食の研究者でもあり、長寿村の食生活を長年にわたり調査している。