ほっと一息

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2023.10.16

みんなで応援! 日本の食卓を守る 国消国産(こくしょうこくさん)

JA広報通信2023年9月号

監修:東京大学大学院教授 鈴木宣弘

イラスト:ゆきたけし

 

皆さんが毎日食べているご飯やおかずが半分以下になってしまったらどうでしょう? 

そうならないために

日本の中で食料を生み出す農家と、それを食べる皆さんが力を合わせて目指すのが「国消国産」です。日本の食卓を守るため、みんなで「国消国産」に挑戦しましょう。

「食料自給率」って知ってる?

 今日、皆さんは何を食べましたか? ご飯? パン? お肉? お魚? どんな野菜や果物がありましたか? こうした食べ物の中に、日本で作られた(穫れた)物がどれくらいあるかを数字で示したのが「食料自給率」です。
 これを食品が持つエネルギー(カロリー)という物差しで測ると、日本はたった38%。例えば100m走るとすると、日本産の食べ物だけでは38mしか走れず、残り62mは外国の食べ物に頼ることになるのです。しかも、このままずっと外国の食べ物を安定して買えるとは限りません。


国の面積が広大なカナダやオーストラリアでは国民が食べる以上の食料を作っています。それに比べて日本は必要な食料の38%しか作ることができていません。

 


異常気象で気温がどんどん上がり、世界中で農作物に被害が出ています。

 

これからは、海外から食料を買えなくなるかもしれません。

 

 

「国消国産」ってなぁに?

 新型コロナウイルスの大流行で世界中の人々がマスクを買い求め、日本でマスクが足りなくなったことがありました。その理由は、マスクのほとんどを外国に頼っていたからです。もしこれが食料だったら、私たちの生活はどうなっていたでしょう。
 例えば、日本で育てられている牛や豚が食べている餌は、ほとんどが外国から買っています。私たちが食べる小麦や大豆もほとんど外国の農家が作っています。そこで考えられたのが、国内で食べる食料はできるだけ国内で生産しようという「国消国産」です。これは、日本の食料自給率を引き上げることにつながる大切な取り組みです。

なぜ「国消国産」が必要なの?

 「国消国産」がなぜ必要なのかを考えるためのポイントは、大きく次の3つです。
(1)日本では農業で生活している人が毎年5万人以上減っています。しかも、農家の約70%が65歳以上のお年寄りです。また、この60年間で約173万haの田んぼや畑が減っています。
(2)世界的な異常気象で台風や大雨、地震、津波などによる被害が増えています。日本が多くの食料を買っている米国、中国、豪州、タイ、カナダなどでも、自然が引き起こすさまざまな問題によって農業にたくさんの被害が出ています。そのため、外国で作られた食べ物にばかり頼ることはできなくなっています。
(3)現在の世界の人口は約80億人(2023年)ですが、2030年までに約85億人になると予想されています。でも今のところ、その人たちが食べるのに十分な農作物を作るのは難しいとされています。日本がこのまま外国で作られた食料に頼り続けていると、世界中の人たちが食べる分を奪うことになってしまうかもしれません。
 こうした理由から、私たち日本人が必要とする食料は、できるだけ国内で作ろうとする「国消国産」の必要が高まっているのです。

今、私たちにできることは?

 日本は2030年度までに食料自給率を45%まで引き上げようとしています。その中で私たちにできるのは、国内で作った(穫れた)米や肉、魚、野菜、果物などをみんなでもっと食べて、応援して、日本の農業や農村を元気にしていくことです。
 「国消国産」の考え方は、世界の問題を話し合う国連(国際連合)が発表した「持続可能な開発目標SDGs(エスディージーズ)」を成功させることにもつながります。これからも、この日本という国がもたらす豊かな実りが絶えることのないように、おいしい食事とその食卓を囲む笑顔がいつまでも続くように、国内で消費する食料はできるだけその国で生産する「国消国産」について、ぜひ皆さんも家族や友達と話し合ってみてください。

 

JAグループの取り組みに期待しています

東京大学大学院教授 鈴木宣弘先生

 皆さんは、「クワトロショック」という言葉を聞いたことがありますか? それは、新型コロナウイルス感染症、外国人による商品の買い占め、異常気象、ウクライナ紛争と、4つの理由によって、私たちが食べている食料や食料を作るための材料が、思うように手に入らなくなっていることをいいます。そんな厳しい時代だからこそ、「国消国産」について考え、実行していくことが必要なのです。JAグループは、私たちが求める食料をより安全・安心でおいしい国産で提供できるように努力しています。JAグループの力強い取り組みに、私はとても期待しています。

※クワトロ:イタリア語で「4」のこと

 

10月は「国消国産月間」、10月16日は「国消国産の日」です。