ほっと一息

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2023.08.25

資産管理の法律ガイド 民法等改正(令和3年)について その15

JA広報通信2023年8月号

JA全中・JAまちづくり情報センター 顧問弁護士●草薙一郎

 

 今回は相続土地の国庫帰属制度の説明をします。

 相続または遺贈で取得した土地を手放したいと考えるケースがあり、こういう場合は、相続などをした土地は荒れ放題となってしまいます。そのため、こういう土地を国庫に帰属させる制度ができ、令和5年4月27日から施行となります。

 国庫帰属を申請できるのは、相続または遺贈で土地を取得した相続人です。申請をすると、要件を充足すれば国に所有権が帰属しますが、対象となる土地には一定の要件があります。建物があったり、抵当権が設定されたり、土壌汚染があったり、境界や範囲等の争いなどがあるときには申請しても却下されます。

 そうでない土地でも、通常の管理に過分の費用が必要だったり、地下に有体物があったりするような土地については、法務大臣は申請を承認しないことができます。

 承認をされた土地の管理費10年分の費用を申請者は納付することとされ、原野は約20万円、市街地の宅地約200平方mで約80万円、田畑は面積にかかわらず20万円(ただし、市街地等の農地は面積に応じて算出。500平方mで約72万円など)が費用として必要だと参考資料には掲示されています。

 この制度は土地の所有権を国庫に帰属する(移転する)というもので、金銭換価が可能な土地である必要はありません。この点は換価が必要とされる相続税の物納とは違います。

 

 相続放棄などにより相続人がいなくなった土地は民法の規定で国庫に帰属するのですが、この土地はどんな土地でもよく、この制度のような一定の要件が求められているわけではありません。

 以上で、令和3年の民法等の改正の説明を終わります。