ほっと一息

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2023.08.18

介護ハンドブック 突然の認知症の症状!? 脳の病気も疑って

JA広報通信2023年8月号

介護者メンタルケア協会代表●橋中今日子

 

 行き先を忘れたり道に迷ったりする見当識障害や記憶障害は、アルツハイマー型認知症の代表的な症状の一つです。しかし、症状だけで認知症だと決め付けるのは危険です。

 元気だった義母が突然行方不明に

 Sさん(女性・30代)のケースです。ある日、近くに住む義母が買い物に出かけたまま行方不明になったと連絡が入りました。幸いなことに義母は5時間後に保護されたのですが、自分の名前も言えず、家族のこともよく分からない状態で、自転車や荷物もどこに置いたのかまったく記憶がないのです。夫や義父は「認知症だ!」とショックを受けていますが、数日前に会ったときの義母とのあまりの変わりように、Sさんは「本当に認知症なの?」と違和感を覚えました。その夜、義母はけいれん発作を起こして意識不明の状態に陥り、救急搬送されました。そこでCTやMRIなどの画像検査を受けたところ、脳腫瘍が判明したのです。

 

 判断に悩んだら#7119に電話で相談

 脳腫瘍や事故などで強い外力が加わり、脳出血や脳梗塞が起きた場合にも見当識障害が起きる場合があります。今回は、脳腫瘍から記憶障害が急激に出て、発見も早かったケースです。しかし、認知症の方で、急激に物忘れ症状が深刻になる、ろれつが回らなくなる、食事ができなくなるといった症状が現れ「認知症が進行した」と判断されたものの、実は脳に異常があり、治療後に症状が軽減したというケースもあります。認知症に限らず「いつもと違う」と感じたときには、主治医やケアマネジャーに相談しましょう。特に、ろれつが回らず、ふらつきや手足のしびれなどの身体症状が急激に出た場合は救急車を要請しましょう。
 「様子がおかしいけれど、救急車を呼んでいいのかが分からない」と悩んだときは、救急安心センター事業(#7119)に問い合わせてください。病状や状態を把握した上で、救急搬送の要請をするべきかのアドバイスや、受診可能な病院などの情報も提供してくれます。