ほっと一息

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2023.07.18

しっかり食べて健やかに! 家族を支えるお肉のチカラ

JA広報通信2023年7月号

 

 

健康長寿のためには、毎日しっかり肉を食べましょう。
「健康のために粗食の方がいい」
「肉は控えて野菜中心の食事が◎」――。
そんな「健康常識」は、実はもう古いのです。

 

その「お肉の常識」もう古いかも!

動物性脂肪は生活習慣病の原因?

→適当なデータはない
牛脂と植物油を使った動物実験では良否を議論する適当なデータはありません。

 

 

粗食の方が長生きできる?

→100歳以上は動物性タンパク質摂取量が多い
100歳以上の高齢者の調査では平均的な日本人よりも動物性タンパク質を多く摂取しています。

 

 

お肉を食べるとコレステロール値が上昇する?

→影響はわずか
血液中のコレステロールの大部分は体内で合成され、食事からの影響はわずかです。

 

 

健康な体づくりには、お肉も必要です

女子栄養大学栄養学部教授 新開省二

 

 「肉は健康に悪い」という誤ったイメージは、日本人の3、4倍もの多量の肉を食べるため、栄養過多による心臓病リスクが高い欧米人の医学データを基にした情報です。ですからほとんどの日本人には当てはまりません。コレステロール値を気にして肉食を避ける方もいますが、コレステロールのほとんどは体内で作られ、食事はそれほど影響しないことが分かっています。また、高コレステロールでリスクが高くなりやすいのは心筋梗塞ですが、日本人は比較的心筋梗塞になりにくい民族といわれています。日本人に多い脳卒中は、むしろコレステロール値が低い方に多いというデータもあるのです。
 肉の取り過ぎよりも大きな問題として懸念されているのが、日本女性およびシニア世代の低栄養による健康への影響です。「粗食の方が健康的」というのは迷信です。肉は効率良く総合的に貴重な栄養を取ることができる優れた食品ですから、避ける必要はありません。むしろ、野菜と共に肉や魚を毎日、バランス良くしっかり食べることを心がけてほしいと思います。

 

 

ぽっちゃり型の方が健康長寿だった!

新開教授が8年間にわたって行った大規模な調査では、BMI(※)が高めの肥満気味のグループよりも、BMIが20以下と低い痩せ気味のグループの生存率の方が低いことが分かりました。さらに65歳以降の女性に限定すると、小太りの体形を維持している人が最も寿命が長いという結果が出ました。

※体格指数「BMI(ボディーマス指数)」=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

 

 

健康のために、全世代でもっとお肉を!

育ち盛りの子どもに 効率良く栄養補給

 タンパク質は体をつくる基本的な栄養素であり、全世代で不足しないように取りたい栄養素です。1食分で比較すると牛肉200gに含まれるタンパク質が約60gなのに対し、アジ1匹(約170g)だと15g程度。肉の方が効率的にタンパク質を摂取できます。ただし、魚には動脈硬化を防ぐDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)などが含まれていますので、肉と魚を1:1くらいで食べるのがいいでしょう。

 

 

健康長寿の道はお肉から!

 厚生労働省の調査によると、70歳以上の5人に1人が「新型栄養失調」だそうです。これは加齢とともに栄養素の利用効率が悪くなるのに加え、食欲が衰えて動物性食品の摂取量が減ることも大きな要因。動物性タンパク質には体の機能を整える上で重要な、免疫力を高める「血清アルブミン」の材料が多く含まれていますから、摂取量が少ないとさまざまな病気のリスクが高まってしまいます。

 

若い女性の貧血対策にも!

 ビタミンB1は糖質をエネルギーに変換するのに必要で、不足するとエネルギーをうまく作り出せず疲れやすくなります。このビタミンB1が特に豊富なのが豚肉。肉には貧血予防に効果的な鉄分も豊富に含まれており、しかも、植物性の鉄分(非ヘム鉄)よりも吸収率が高いため、効率良く鉄分を補給できます。

 

うつ病や認知症を予防


 「幸せホルモン」として知られるセロトニンの分泌が減少すると、うつ病になりやすいといわれています。セロトニンの原料になるのは、肉に多く含まれている必須アミノ酸の1つトリプトファンです。他にも肉に含まれるアラキドン酸という栄養素には脳の神経細胞の生成を促す働きがあり、認知症改善の可能性を持つと注目されています。アラキドン酸は、特に豚レバーに多く含まれています。

 

必須アミノ酸をバランス良く摂取できる

 よく「良質なタンパク質を取りましょう」と言われますが、「良質」とはアミノ酸バランスが整っていることをいいます。肉に含まれる20種類のアミノ酸のうち9種類は人間が体内で作ることができない「必須アミノ酸」。大豆のタンパク質も良質ですが、必須アミノ酸のバランスという面では、動物性タンパク質の肉の方が優れています。

1日に100g前後を目安に食べましょう


「日本人の食事摂取基準(2020年)」(厚生労働省)によると、1日当たりのタンパク質摂取目安量は体重1kg当たり0.8g。体重50kgの人なら1日当たり40gが目安です。シニアの方の場合は利用効率が低下しているため、60gから70gは必要と考えましょう。 肉に含まれるタンパク質は、その重量の5分の1程度ですから、100gの肉で取れるのは20g程度。私たちは肉以外のさまざまな食品からもタンパク質を摂取しています。卵や乳製品、大豆製品はもちろん、米にも多く含まれていますから、トータルで1日の摂取目安量をカバーできれば大丈夫です。100gの肉と100gの魚を、3食のどこかで食べるようにして、さらに牛乳や卵などで補うよう心がけましょう。