ほっと一息
2024.07.10
みんなのSDGs 田んぼソムリエになろう ナマズが生きられる田んぼ
JA広報通信2024年6月号
田んぼソムリエ●林 鷹央
田んぼは、水や生きものを通じて山や川、周辺の森や草むらなどとつながっています。ナマズは成魚だと全長60cmほどになる、日本では大型の淡水魚です。長いひげと細かい歯が見える大きな口、ぬるっとした肌で体をくねらせて泳ぐさまは「竜」を思わせる神々しさもあります。
昔は春の終わりから初夏にかけて田んぼに産卵に来る姿がよく見られました。戦前、戦後すぐの生まれの人に話を聞くと、黒くヌメヌメしたナマズの集団を田んぼで見たという話が出てきます。昔は用水路の水が直接入ったり、排水路と田んぼの高低差が少なくナマズが遡上(そじょう)できる環境がありました。滋賀県などでは子どもが田んぼでナマズを捕まえてきて、夜の食卓で英雄になったなどの話も残っています。
ナマズは人やサギに狙われる危険を顧みず、子孫を残すために田んぼにやって来ます。しかし、現代はポンプアップで田んぼに水を入れたり、排水路が深く掘られ高低差ができてしまったりと、ナマズが田んぼに行けない状態です。
そんな中、埼玉県の吉川市では、田んぼに産卵に来るナマズを市のシンボルにしています。観察会を行ったり、ナマズ料理店も何軒か残っており、人と田んぼとナマズがつながり、お互いが利用し合うことで共存しようとしています!
JR吉川駅前にある金色のナマズモニュメント(埼玉県)
生きもの調査で確認されたナマズの幼魚(埼玉県)
田んぼソムリエ 林 鷹央(はやし たかお)
三重県生まれ、東京育ち。「田んぼの生きもの調査」を通して全国の農村・学校で生物多様性や農・里山文化の意義を伝える。著書に『田んぼソムリエになる!』(安心農業株式会社刊)がある。