ほっと一息

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2024.02.07

野菜のルーツ 栄養価は抜群──パセリ(セリ科)

JA広報通信2011年2月号

植物ライター ●岡田比呂実

 

 普段は肉料理やフライの皿の隅にちょこんと乗って、添え物の役割に甘んじているパセリ。独特の風味がある香辛野菜です。

 原産地は地中海沿岸地域といわれ、ギリシャ・ローマ時代には薬用や香辛料として使われていました。古代ギリシャでは、オリンピックの勝者にパセリの冠が与えられたそうです。

 栽培はイタリアで始められ、17世紀にはヨーロッパ全域に、19世紀初頭にはアメリカに広まりました。やがて西洋料理に欠かせない香辛野菜となっていったのです。

 日本へはオランダ人がもたらしたとされ、オランダゼリの名で『大和本草』(1709年)に記載されています。当初長崎で栽培されましたが、明治初年(1868年)にあらためて欧米から種子が導入され、以来、各地で少しずつ栽培されるようになりました。意外にも第二次大戦前には、現在のような洋食のつけ合わせとしての用途が定着していたそうです。

 日本で生産されるのは、葉がちりめん状に縮れるタイプが主流ですが、葉が平滑なタイプ(イタリアンパセリなど)もあり、こちらの方が風味は強いようです。また、日本ではあまり知られていませんが、肥大した根を利用するタイプ(ハンブルクパセリ)もあります。

 ごそごそした食感を敬遠する向きも多く、しばしば食後の皿にぽつんと残されている気の毒な存在ですが、栄養価は抜群。ビタミンA、C、カリウムを桁違いに多く含み、カルシウム、鉄、亜鉛などのミネラル分も豊富です。

 細かく刻んでチャーハンに混ぜ込んだり、軽く衣をつけて天ぷらにしたりすれば、食感が気になることもありません。添え物扱いするにはあまりに惜しい、価値ある野菜です。