ほっと一息

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2024.01.03

永山久夫の健康万歳! おせち料理は長寿食

JA広報通信2023年12月号

食文化史研究家・日本の長寿食研究家●永山久夫

 

 昔はお正月が来ると、誰でも1歳、年を取りました(数え年)。その年取りを祝って、年神様と一緒にいただくのが「おせち料理」。

 おせち料理には、タイやエビなど普段は口にできないぜいたくな料理が、何段もの重箱に山盛り。

 祝いさかなの中でも重視されてきたのが魚卵類で、何種類か必ず用いられています。数の子やすじこ、イクラ、たらこなどで、中でも重要なのが数の子。ニシンの卵巣を加工したものです。数の子という呼び名はニシンの別名の「カド」の子がなまったものですが、卵の数が多いことに由来するという説もあります。

 数の子の色が黄金色で、しかも卵の数が多いことが、山と積まれた金銀財宝を表しています。正月にふさわしいおめでたい料理として欠かせません。卵の数が多いことは、たくさんの子宝につながり、子孫繁栄に結び付けられてきました。

 おせち料理に用いられるサケの子のイクラやすじこ、それにスケソウダラの卵巣を塩に漬けたたらこ、ボラの卵巣で作ったからすみ、ウニなども色彩、数の多さが商売繁盛につながっています。

 これらの魚卵は美味なだけではなく、タンパク質が多く、ビタミンDやミネラルの亜鉛も含まれています。いずれも、インフルエンザや風邪などの感染症を防ぐ上で欠かせない免疫力を強化する働きがあります。

 イクラとすじこの赤い色素はアスタキサンチンという抗酸化成分で、脳や体の酸化を防ぐ成分として若返りにも役立ちます。イクラとすじこのどちらにも血液をサラサラにしたり、物忘れを防ぐ成分も多く、お肌の若さを保つビタミンAもたくさん含まれています。

 おいしい、おいしい、今年の新米ご飯。

 そのまま食べても喉が鳴るのに、イクラをたっぷりのせて口に運びます。新米ご飯のほんのりした甘さをイクラが引き立て、夢中で3杯も平らげてしまいました。

食文化史研究家・日本の長寿食研究家 永山 久夫(ながやま ひさお)

1934年福島県生まれ。食文化研究所、綜合長寿食研究所所長。古代から明治時代までの食事復元研究の第一人者。長寿食や健脳食の研究者でもあり、長寿村の食生活を長年にわたり調査している。