ほっと一息
2023.12.04
資産管理の法律ガイド 親族法について その3
JA広報通信2023年11月号
JA全中・JAまちづくり情報センター 顧問弁護士●草薙一郎
今回は婚姻の効力について説明をします。
婚姻の届けを役所に提出することで、届け出人両名は婚姻関係となります。婚姻をすると、現行民法では夫婦は夫または妻の氏を称することと規定しています(民法750条)。ただし、日本国籍の人が外国国籍の人と婚姻した場合には日本国籍の人の氏は変更されないのが原則です。
夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならないとされています(民法752条)。いわゆる夫婦同居義務、扶助義務です。同居義務といっても夫婦の信頼関係が破綻し、夫の暴力など、同居をすることで精神的、肉体的に問題が生じる危険性がある場合まで同居をすべき義務はありません。従って、正当な理由で別居に至っても、別居した者にこの義務違反が当然に生じるということではありません。
夫婦間の契約は、婚姻中はいつでも夫婦の一方からこれを取り消すことができるとされています。ただし、第三者の権利を害することはできません(民法754条)。
契約は本来履行されるべきだとされていますが、夫の圧力に妻が負けて契約をしたり、あるいは夫婦間の約束を履行するべきか否かは、本来、夫婦間の愛情などに委ねるべきとの問題である、などの理由です。
対象となる契約に制限はありませんが、夫婦間の契約でも、その内容や状況によって契約の取り消しを認めることが適当でなかったり、「婚姻中」とはいえないほど夫婦関係が破綻しているようなときには、この取り消しはできないとされています。
なお、婚姻中の氏ですが、夫婦の一方が死亡したときは、生存配偶者は婚姻前の氏に復することができます(民法751条)。この場合、生存配偶者は姻族関係の意思表示、死亡配偶者の血縁との親族関係の終了も可能です(民法728条)。
次回は日常家事債務について説明します。