ほっと一息

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2020.11.22

ストップ! 農作業事故  総合的な体力低下と農作業安全

人間工学専門家●石川文武

 

 高齢化に伴う心身諸機能の低下について説明してきました。各種機能については25歳前後をピークとして加齢とともに右下がりになることがお分かりいただけたでしょうし、それらを意識した上でどのように作業安全につなげていけば良いかも理解・実践できていると思います。

 高齢になって心身諸機能が低下したからといって、農業をやめなさいとは言えません。適時適切な農作業を実施するための多くの経験を生かさない手はありません。

 前回までの復習になりますが、高齢化に伴う諸機能について整理します。一部に未解説の項目もあります。

 視力・聴力・皮膚感覚や目の薄明順応などの感覚特性と平衡機能、抗病および回復能力などの低下が著明。筋力では手や腕の力、背筋力などの低下に比べて脚力の低下が大きい。体の柔軟性では脊柱の前屈や側屈の柔軟性低下に比べて肩関節の柔軟性低下が目立つ。速度に関係した運動機能では書字速度や動作調整能の低下が大きい。精神機能では記憶力や学習能力の低下が著しい。

 一方、高齢になっても有利な点があります。心身諸機能の衰退が一般的にはあるとしても動作の正確さ、情緒の安定、責任感、経験の豊かさなどから総合的に物事を判断しようとする慎重さなどが挙げられます。

 最近の日本老年学会からの報告によれば、「65歳以上の高齢者の身体機能や健康レベルは10~20年前より上がっており、5~10歳は若返っていると想定される」そうです。さらに、厚生労働省の調査によれば、高齢者の身体・心理機能に若返り現象が認められ、1992年と2002年の比較で握力、開眼片脚起立時間、歩行速度が優位になっているとされました。もちろん、加齢によってばらつきは大きくなっていますから、この「若返り現象がある」ことをうのみにせず、ご自身の体と相談しながら農作業に取り組みましょう。

 


図 握力の年次推移