ほっと一息

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2023.07.16

なくそう食品ロス 食品ロスを減らす、買い物前の一工夫

JA広報通信2023年7月号

食品ロス問題ジャーナリスト●井出留美

 

 コロナ禍の初期の頃、英国やオーストラリア、イタリア、アイルランドなど、多くの国で家庭の食品ロスが減る傾向が見られました。なぜかというと、買い物前の行動が変わったからです。

 コロナ前は、いつでもどこでも何でも買うことができました。

 でも、コロナ禍では、例えばイタリアではスーパーに入れる人数が制限されたり、手袋をして買い物してくださいと言われたりするようになりました。

 日本でも、買い物は3日に1回にしましょう、家族全員で行かないで1人で行きましょう、という呼びかけが某知事から出ました。

 コロナ前に比べて、買い物に行きづらくなったのです。

 人々は買い物に関して、今までより真剣に考えるようになったのでしょう。大勢では行けないし、買い物に行ける時間が限られるとなれば、本当に必要な物だけを取捨選択して買わなければなりません。買い物に行く前に、冷蔵庫や家の食品庫に何がいくつあるか、賞味期限まではどれくらいか、などをチェックする。それに基づいて、買い物リストを作り、持っていく。すると、無駄買いや重複買いが減ります。

 ある全国紙の投書欄には、60代の会社員女性が、コロナ禍で、買い物に思うように行けなくなったので、冷蔵庫の野菜を使い切ろうと努力するようになったら食費が3割も安くなったとの投稿がありました。

 消費者が日々の食事をするための購買行動や消費行動は、次のように分けられます。①買い物前 ②買い物の最中 ③買った後の保管 ④調理 ⑤食事 ⑥片付け。

 環境配慮のキーワードである「3R(スリーアール)」のうち、最も優先順位が高くて節約になるのは「Reduce(ごみを出さない・廃棄物の発生抑制)」です。つまり、必要以上に買い過ぎないことがポイントなのです。

 家庭の食品ロスを減らすためには買い物前が勝負! です。

 

 

食品ロス問題ジャーナリスト 井出 留美(いで るみ)


株式会社office3.11代表取締役。博士(栄養学/女子栄養大学大学院)修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。『食べものが足りない!』『SDGs時代の食べ方』『捨てないパン屋の挑戦』など著書多数。