ほっと一息
2023.07.14
お米をおいしく楽しもう すし店のこだわり
JA広報通信2023年7月号
五ツ星お米マイスター●小池理雄
小池精米店がお付き合いしている飲食店には、『ミシュランガイド』に掲載されているお店がいくつかあります。うち2店舗はすし店です。『ミシュランガイド』で星を獲得するようなすし店はお米にどこまでこだわりを持つのか、ご紹介します。
銀座のA店はお米の味に妥協しませんでした。
まず私が、大将からどのようなお米が良いのか聞き取りをします。「粒は大きめがいい。もっちりしていて、しかしアルデンテ」。正直、何を言っているのかよく分からないと思います。しかし私はこれを聞いて「食感はあるけれどもパサついては駄目」と理解しました。そしていくつかのサンプルとして「里山のつぶ」(福島県)、「たかたのゆめ」(岩手県)、「さがびより」(佐賀県)を出します。大将が実際に使った後、感想を再度聞き取ります。「さがびよりは問題なかったが、時間がたつとダマ(塊)になる。そこが改善すればいい」。そこでいくつか最初に出したサンプル米をベースに、ダマにならないように改善したブレンド米を出したのです。
渋谷のB店は「もみを保管して、発注のたびにもみずりして玄米にしてから出荷するような生産者から仕入れてほしい」という、産地の人にしてみればかなりハードルの高い条件を提示してきました。それでも条件を満たしたいくつかの生産者からサンプル米を試食して、ある生産者の「コシヒカリ」に決まったのですが……。
さらに今度はその「コシヒカリ」の白米と八分づき(ぬかや胚芽が少し残っている米)の2種類をご所望されたのです。すしのシャリはぱらつきが大事です。しかし「コシヒカリ」は白米だけだとどうしても粘ります。そこで「コシヒカリ」のうま味を損なわずに、かつ握りやすさを求めて白米と八分づきをブレンドしました。
こだわっているお店はお米に対してここまで桁違いなこだわりを有しているのです。こういった世界を知れば知るほど、私はお米の無限の可能性を感じることができるのです。
五ツ星お米マイスター 小池 理雄(こいけ ただお)
小池精米店三代目店主。1971年東京・原宿生まれ。大学卒業後、出版社、人事制度コンサルティングファームなどを経て、2006年に小池精米店を継ぐ。それまでの社会経験を生かし、新しいお米屋さんのあり方を常に模索している。