ほっと一息

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2023.07.12

私の食育日記 年齢とともに変化する好き嫌い

JA広報通信2023年7月号

食育インストラクター●岡村麻純

 9歳の息子は近頃好き嫌いが減り、苦手だった生野菜も、少し辛い物なども食べることが増えました。喜びもつかの間、今度は何でも食べていた6歳の娘が、好き嫌いが多くなりました。このように好き嫌いは、個人差だけでなく、年齢によっても変化するようです。

 好き嫌いの始まりは生後間もなく、といっても生まれてすぐは甘いと苦いを感じ、本能で苦い物を吐き出します。その後、生後6カ月にかけて味覚が敏感になり、離乳食を始める時期となります。味覚を感じる味蕾(みらい)は、乳児期が一番多く、年を重ねるごとに減少し、30代では約3分の1になります。大人にとっては味気ない離乳食の薄味も、乳児にとっては十分なことが分かります。敏感な味覚ゆえ、同じホウレンソウでも食べる日と嫌がる日があるなど、むらが出ます。この頃は好き嫌いよりも、いろいろな食材に出合う経験が最も大切です。

 その後幼児期になると、食の好みができ、好きな物ばかりを大量に食べたがる傾向が出てきます。しかし、まだ自分の体に必要な量を判断できず、食べ過ぎておなかを壊してしまうこともあるので注意が必要です。この頃、大人より味蕾の多い子どもたちが、苦い、渋いなどを敏感に感じて好き嫌いが増えるのは当然です。一方で、幼児期は体だけでなく、心の成長も大きい時期です。食べたい物だけ食べればよいことに慣れてしまうと、その意識が続いてしまいます。この時期にこそ、食への感謝の気持ちと嫌いでも食べてみるという思いを大切にしたいです。そうすれば、小学生、中学年の頃から食べられる物が増えていきます。

 大切なのは、好き嫌いが増える時期にさまざまな味に挑戦し、他の物で同じような栄養が取れるようにすることと、今の好き嫌いは一生ものではないことを忘れずに、時々は食卓に出し続けることだと思います。皆さんにも小さい頃は嫌いだったのに今は大好き、そんな食材があるのではないでしょうか。

岡村 麻純(おかむら ますみ)

食育インストラクター
お茶の水女子大学食物科学講座卒業
大学では食育をテーマに研究
男女2児の母