ほっと一息
2023.07.06
資産管理の法律ガイド 民法等改正(令和3年)について その13
JA広報通信2023年6月号
JA全中・JAまちづくり情報センター 顧問弁護士●草薙一郎
今回は、相続や遺贈で不動産を取得した相続人に対する相続登記申請の義務化の説明をします。
相続をしたのに相続登記をしないまま長年が経過したため、その不動産の所有者が不明となったり、名義変更をしようと思っても関係者が多数になっていたりして、相続登記が変更されない不動産が多くあります。
そのため、今回、不動産登記法も改正し、相続や遺贈で不動産を取得した相続人に対して、相続登記の申請を義務化しました。対象は、前記の相続人ですので、相続人でない受遺者は対象外です。義務は登記の申請であり、登記を設定することではありません。
改正によると、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日から相続登記の申請を義務付けるとしています。
3年以内に遺産分割ができれば、その旨の申請をすればいいのですが、もし、3年以内にできないときには、相続人申告登記の申し出をすればいいことになりました。この相続人申告登記は自分が相続人である旨を法務局に申し出て登記官が職権で登記をする制度で、相続人の名前は登記されますが、相続持ち分の登記は付きません。
3年以内に遺産分割協議が完成しないときは、この相続人申告登記をし、遺産分割協議が成立したら3年以内に相続登記の申請をする必要があります。
正当な理由なく3年以内に相続登記の申請(3年以内に遺産分割できないときは前記の処理)をしないと、10万円以下の過料の制裁を受ける可能性があります。
この制度は令和6年4月1日から施行となりますので、施行前の相続も対象です。ただし、施行前の相続については施行日から3年間の猶予があります。