ほっと一息
2023.06.20
みんなのSDGs 田んぼソムリエになろう 田んぼ周辺のタンパク源
JA広報通信2023年6月号
田んぼソムリエ●林 鷹央
最近、食用コオロギなど昆虫食が話題です。さまざまな昆虫が、主に海がない内陸地域での貴重なタンパク源として食用とされています。
皆さんはイナゴのつくだ煮を食べたことはありますか? これは食べやすい入門コースです。さらにおいしくて高級なものが「蜂の子」で、同じ瓶に入っている幼虫・さなぎ・羽化間近のさなぎで味が違い、食べ飽きません。日本では長野県が昆虫食で有名で、冬に天竜川で捕れる「ざざ虫」というトビケラの幼虫も高級食材です。
手頃な値段なものだと蚕のさなぎがあります。昔は養蚕で絹糸を取っていたので、繭の中にあるさなぎを食べることは効率も良かったのでしょう。
虫が苦手な人には、ドジョウやタモロコ、メダカなど、雑魚(ざっこ)と呼ばれる水路の小魚のつくだ煮や、白身肉がおいしいナマズ料理などがあります。
田んぼを荒らしに来るイノシシや鹿などもタンパク源です。仏教では四つ足の獣を食すことは禁じられていて、食べられなかったのでは? と思われがちですが、イノシシ=牡丹(ぼたん)、鹿=紅葉(もみじ)など、植物の名前で呼び、肉を食べる言い訳としていました。
近い将来、宇宙船内でタンパク源を得るには、大きな牛や豚より、小さい昆虫の方が現実的でしょう。現在も増え続ける人口や食料難に対して、昆虫食は一つの答えになるのではないでしょうか。
雑魚のつくだ煮。田んぼで見かける、さまざまな小魚が確認できる
田んぼソムリエ 林 鷹央(はやし たかお)
三重県生まれ、東京育ち。「田んぼの生きもの調査」を通して全国の農村・学校で生物多様性や農・里山文化の意義を伝える。著書に『田んぼソムリエになる!』(安心農業株式会社刊)がある。