ほっと一息

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2023.06.19

なくそう食品ロス ペットボトル水の賞味期限

JA広報通信2023年6月号

食品ロス問題ジャーナリスト●井出留美

 

 最近、太陽光パネルと蓄電池を買って、マンションのベランダで使い始めました。晴天の日や昼間に発電した電力を、スマートフォンやパソコンの充電に使えるようになりました。いざ災害が起きたときの備えにもなるので心強いです。

 災害時に備えて、自宅に食料や飲料水を備蓄している人も多いでしょう。ペットボトル入りのミネラルウオーター、期限が過ぎたからといって、すぐ捨ててはいませんか。ペットボトル水の賞味期限は、飲めなくなる期限ではありません。

 ガラス瓶と違って、ペットボトルは、容器を介して水が蒸発していきます。ある一定の範囲までは減少も認められますが、決められた範囲を超えて中身が減ると、計量法に違反することになってしまい、販売できなくなります。そこで、ペットボトル入りの水には、明記してある容量の水が、この日までは確実に入っていますよ、ということを示す期限が書いてあるのです。安全性とは無関係なのです。

 2016年に発生した熊本地震では、全国からペットボトルの水が送られ、地震から3年以上たっても使い切れず、期限が切れた水が130tも余ってしまいました。熊本市は、花壇の水やりや、手足を洗うために使ったそうです。

 19年に千葉県を襲った台風では、富津市が配ったペットボトルの水の期限が切れていました。市民から指摘があり、市がおわびし、メディアが報じました。でも、期限が切れているからといって、飲めないわけではないのです。

 日本では毎年のように自然災害が起きています。ペットボトルの水の賞味期限は「容量が担保できる期限である」と、所属している組織や自治体にも教えてあげましょう。水は命の源。貴重な資源です。決して無駄にすることなく、最後まで大切に使いましょう。

 

食品ロス問題ジャーナリスト 井出 留美(いで るみ)

株式会社office3.11代表取締役。博士(栄養学/女子栄養大学大学院)修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。『食べものが足りない!』『SDGs時代の食べ方』『捨てないパン屋の挑戦』など著書多数。