ほっと一息
2023.06.17
お米をおいしく楽しもう お米のおいしさで差別化を図る飲食店
JA広報通信2023年6月号
五ツ星お米マイスター●小池理雄
私の店は飲食店とのお付き合いが多いですが、以前は安いお米を買い求めるお店が多くありました。
彼らいわく、「同じ茨城県産コシヒカリだけれども、○○商店の方が安い」「客は米の味の違いなんて分かんないよ」「お米代を削って少しでも経費削減したい」など……。
なぜこのように考えるのでしょうか? それは「農産物だから、産地と品種が同じでも中身は違うことに気付いていない」「お米に関心、知識がない」「お米に食材として重きを置いていない」「お米を工業製品だと思っている(値段しか興味がなく生産者の生活まで思いが至らない)」「炊飯を調理ではなく作業だと思っている」ということが考えられます。
ところが、ある焼き肉店からこんな話を聞きました。「ウチの売りは米ですよ、米。焼き肉屋だから肉がおいしいのは当たり前。だから他店との差別化でお米選びはこだわりたいです」と。
最近このように、今まであまり注目していなかったお米が、実は他店との差別化を図るための有効なツールであると気付いたお店が増えてきたのです。例えば、
①渋谷の鳥料理屋さん……なんとなく「あきたこまち」を使っていたが、親子丼や卵かけご飯といった鶏料理に合うお米を探している!
②六本木の焼き肉屋さん……焼き肉に合うお米を、独自のブレンド米として提供してほしい!
③中目黒の海鮮丼屋さん……海鮮丼なので、何よりおいしいお米。無洗米なんてとんでもない!
④原宿の和食屋さん……新しく店を開くに当たりお米にこだわりたい。ここで手を抜いては料理全体の評判も落ちる。
お米に力を入れている飲食店は間違いなくメインの食材にも力を入れているはずです。皆さんもお米にこだわっている飲食店に、ぜひ足を運んでみてくださいね。
五ツ星お米マイスター 小池 理雄(こいけ ただお)
小池精米店三代目店主。1971年東京・原宿生まれ。大学卒業後、出版社、人事制度コンサルティングファームなどを経て、2006年に小池精米店を継ぐ。それまでの社会経験を生かし、新しいお米屋さんのあり方を常に模索している。