ほっと一息

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2023.06.09

資産管理の法律ガイド 民法等改正(令和3年)について その12

JA広報通信2023年5月号

JA全中・JAまちづくり情報センター 顧問弁護士●草薙一郎

 今回は不明相続人の持ち分の処分についての説明をします。
 相続により不動産が共有となるのに、相続人の中に所在不明者がいる場合、遺産分割をするのであれば、不在者財産管理人を選任して協議をします。この場合、所在不明者の相続分については、共有という形で遺産分割が終了することが多いようです。そして、共有となった後に所有者不明土地、建物の管理人を選任するということも想定されます。
 しかし、遺産分割協議をしないまま10年以上相続開始から経過していたときは、遺産分割の機会は十分に与えられたといえます。この場合、改正法では遺産分割は相続人の合意がなければ法定相続分での分割となります。
 そこで、今回の改正法では、相続開始から10年を経過したときに限って、所在不明相続人との共有関係を解消する方法として、所在不明相続人(氏名等不特定を含む)の持ち分を、他の共有者がその持ち分価額を供託した上で取得できることとなりました。この場合には裁判所の決定が必要となります。また、裁判所の決定があれば、所在不明相続人以外の共有者全員で、所在不明相続人の持ち分を含む不動産全てを第三者に売却し、所在不明相続人の持ち分価額を供託して共有関係を終了させることも可能となりました。
 所在不明相続人の持ち分は具体的相続分ではなく、相続開始後、10年を経過した後の処理ですから、法定相続分の持ち分価額となります。
 ただし、この処理方法については、相続開始後10年経過前に遺産分割請求が裁判所に申し立てられたりこの処理をすることの異議の申し出があったりするときは、遺産分割手続きが優先されます。

 次回は、相続登記の申請の義務化について説明します。