ほっと一息
2023.05.12
資産管理の法律ガイド 民法等改正(令和3年)について その11
JA広報通信2023年4月号
JA全中・JAまちづくり情報センター 顧問弁護士●草薙一郎
今回は遺産分割に関する見直しの法改正について説明します。
相続開始から長時間が経過しているのに、遺産分けをまったくしない土地建物等については、相続人が所在不明となったり、多数の相続人となったりするため、ますます遺産分けに着手することが困難となります。
そこで、今回の法改正では遺産分割に関して時的限界を設けることで、遺産分けを放置しないような方策を設けました。
具体的には、相続開始から10年を経過すると、遺産分割は具体的相続分ではなく、法定相続分によるというものです。
相続の場合、特定の相続人に生前贈与がなされ、特別受益があるとか、寄与分があるなどを相続人が主張することで、遺産分割の各人の相続分は必ずしも法定相続分とはならないこともあります。この相続分を具体的相続分と称しています。
今回の法改正は、相続開始時から10年を経過後にする遺産分割は、具体的相続分ではなく法定相続分または指定相続分によるというものです。つまり、相続開始から10年を経過すると、特別受益や寄与分を前提とした遺産分割ができないことになりました。ただし、相続人全員が具体的相続分でいいと合意したときは別です。
また、10年経過前に家庭裁判所に遺産分割請求をしていた場合も別です。
なお、この改正は令和5年4月1日の施行前の相続にも適用されますが、少なくとも5年の猶予期間が設けられていますので、詳細はJAあるいは、弁護士等に確認してください。
次回は不明相続人の持ち分についての法改正の説明をします。