ほっと一息

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2023.04.30

永山久夫の健康万歳! 卵かけご飯への郷愁

JA広報通信2023年4月号

食文化史研究家・日本の長寿食研究家●永山久夫

 

■ 頭の回転を良くするレシチン

 朝食の定番として、日本人に愛されてきた「卵かけご飯」。今でもその人気は不動で、ホテルの朝食でも、和食コースには小鉢に収まった生卵が置いてあり、卵かけご飯専用のしょうゆまで登場している時代です。
 炊きたての白いご飯があると、無性に食べたくなるのが卵かけご飯。特に中年以上になると昭和への郷愁を感じて何とも切なくなります。
 戦後の貧しく乏しかった時代のシンボリックな食べ物が卵かけご飯で、1個の生卵を家族で分け合って食べていた思い出も、今はすでに遠い昔。
 ご飯に生卵、しょうゆだけで、とろりとした美味なご飯料理が即座に出来上がります。
 このシンプルで、元気の出る健康食が流行するのは江戸時代で、次のような川柳があります。
 生たまご しょうゆの雲に きみの月
 「器に割って入れた生卵の黄身は満月。そして、しょうゆはまるで雲のようだ」という句で、江戸っ子の見事な感性を表しています。
 脳の若さを維持し、その機能を向上させる働きをする成分が卵にはたっぷり。黄身に含まれているレシチンは、記憶力を良くして物忘れを防ぎ、学習能力を高める成分として注目されているのです。
 レシチンをコンスタントに取ることによって、老化に伴う記憶障害や認知症などの予防にも役立つという説もあります。
 レシチンは、日本人の主食である米にも、量は多くありませんが含まれており、生卵をかけたご飯は脳の働きを良くし、その老化を防いで若々しい頭脳力を維持するためにも効果的です。

 

食文化史研究家・日本の長寿食研究家 永山 久夫(ながやま ひさお)

1934年福島県生まれ。食文化研究所、綜合長寿食研究所所長。古代から明治時代までの食事復元研究の第一人者。長寿食や健脳食の研究者でもあり、長寿村の食生活を長年にわたり調査している。