ほっと一息
2023.04.27
みんなのSDGs 田んぼソムリエになろう 「かてもの(糧物)」として田んぼを食べる
JA広報通信2023年4月号
田んぼソムリエ●林 鷹央
食料安全保障が日々話題となっていますね。江戸時代中期にも、米沢藩主の上杉鷹山が現在の日本に通じるピンチを乗り越えたエピソードがあります。
上杉氏は、豊臣秀吉から会津藩120万石の所領を与えられていました。しかし、関ケ原の合戦後には米沢藩30万石へ国替えされてしまいます。さらに約60年後には15万石に減らされてしまいました。
100年余り後、若くして家督を継いだ上杉鷹山は悪化した藩政の改革に着手します。自ら質素倹約をし、天明の大飢饉(ききん)のときは高額になったお米を他藩から買い付け、藩の蔵を全て開いて配給し領民を餓死から救いました。その経験から次なる飢饉に備え、主食の米を節約するための代用食となる動植物の調査やレシピを研究しました。そのときに安全性なども考慮してできた書物が『かてもの』です。
鷹山の没後に起きた天保の大飢饉では、『かてもの』の知恵と、藩士たちも日頃から行っていた質素な暮らしが功を奏し、多くの人々が餓死を免れました。
私はその話を知ってから、自分が関わる食育イベントや、農業団体の「田んぼの生きもの調査」でも、「かてもの」探しを取り入れた「糧もん調査」を実施しつつ、研究も重ねるようになりました。
田んぼには稲の他にも魅力的な作物が多くあります。皆さんもぜひ、「かてもの」を探してみてくださいね。
『かてもの』に掲載されているスベリヒユ。畑の代表的な雑草だが、栄養もあり保存も利く
田んぼで多く見られるコナギ。「かてもの」の1つで、保存は難しいが、美味で栄養もある
田んぼソムリエ 林 鷹央(はやし たかお)
三重県生まれ、東京育ち。「田んぼの生きもの調査」を通して全国の農村・学校で生物多様性や農・里山文化の意義を伝える。著書に『田んぼソムリエになる!』(安心農業株式会社刊)がある。