ほっと一息
2023.04.16
資産管理の法律ガイド 民法等改正(令和3年)について その10
JA広報通信2023年3月号
JA全中・JAまちづくり情報センター 顧問弁護士●草薙一郎
今回は相続人不存在制度の見直しについて説明します。
相続人がいることが分からないとき、現行法では相続財産管理人を選任して、その後に諸手続きをします。
隣地との境界を越えて土地を使用していたので時効取得したいとか、土地に仮登記や抵当権が設定されていたので抹消を求めたいという場合、その仮登記や抵当権などの相続人がいないときには、この相続人不存在の制度を利用していくことになりますが、とても時間がかかります。
具体的には、裁判所に相続財産管理人の選任申し立てをし、選任されると2カ月間以上公告され、その後、相続債権者に対する請求の申し出期間として2カ月以上の公告をし、さらに、相続人の捜索を6カ月以上した上で、初めて相続人が不存在であると確定され、それから財産の清算に入ることになるのです。つまり、選任公告から最短でも10カ月しないと清算処理に入れないことになります。
そこで、改正法では管理人の選任公告と同時に相続人の捜索を6カ月以上とし、並行して債権者に対して2カ月以上の公告をすることとし、6カ月以上の段階で清算手続きに入ることができるようになりました。
とはいっても、4カ月短くなっただけです。
この改正法の対象ですが、施行日である令和5年4月1日を基準に、それより前に管理人が選任されたときは、従前の手続きに従うことになり、選任が施行日より後であれば改正法の適用となります。
特別縁故者による財産の分与の申し立ても、改正法適用の場合には、相続財産管理人の選任ならびに相続人の捜索公告期間満了(6カ月以上)後3カ月以内に申し立てが必要ですので、申立時期が早くなることになります。
次回は遺産分割の見直しについて説明します。