ほっと一息

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2023.04.05

日本人の暮らしの パートナー  和ハーブの 楽しみ方

JA広報通信2023年3月号

●取材協力:一般社団法人和ハーブ協会 https://wa-herb.com/

 

おいしくて、体に良くて、心地いい。
私たちの身近にある有用植物「和ハーブ」を、普段の暮らしに取り入れてみませんか。

 

和ハーブとは  宝物は見慣れた景色の中に

 「ハーブ」というと海外の香草のイメージが一般的ですが、日本にもハーブ&スパイスがあるのをご存じでしょうか。「和ハーブ(※)」とは江戸時代以前より日本各地で広く用いられ、生命と暮らしを支えてきた有用植物のことです。日本原産の野生種や栽培種、および外来種も含みます。
 私たち日本人の心身は、日本の風土によって培われたもの。そして飲食や薬、お風呂、繊維、染め、生活材、儀礼、環境保持などに使われてきたものは、身近にあって欠かすことのできない、親しみある植物たちでした。コロナ禍を経て、再び自分たちの足元を見つめ直す機運が高まると同時に、和ハーブへの注目度も一層増しています。風土の独自性とそこに育つ和ハーブの魅力を掛け合わせ、地域の新しい産業にしていく取り組みが今、全国各地で始まっています。
(※)一般社団法人和ハーブ協会の定義による。

 

 

和ハーブを暮らしに 身近な植物に目を向け魅力を生かす

 昔から日本人は土地に息づく自然素材を生かすことで、健やかさ、美しさ、そして感性を育んできました。和ハーブは、今こそもっと私たちの暮らしの隅々になじんでも良いはずです。
 その可能性は無限大です。まずは一つ一つの植物について知り、各地でどのように使われてきたかを学びながら、新しい感性で暮らしに取り入れてみましょう。例えば、乾燥させた和ハーブを二握り分ほど手鍋に入れて煮出し、それをバスタブに入れてつかれば、自宅でも手軽に良い香りのお風呂が楽しめます。
 植物とその知恵を見直し始めると、季節や体調の変化を見逃さないようになり、いつもの散歩道や通勤・通学路も違って見えてきます。実は日々の暮らしだけでなく人生そのものを豊かにしてくれるのも、和ハーブの魅力なのです。

 

 

和ハーブが育つ場所 シソやタンポポなど、身近な場所でよく見かける植物も和ハーブです。正しく見分け、ルールとマナーを守って採取を楽しみましょう。

採取のルールとマナー

1土地の所有者や管理者の許可を得た所で採取する。
2除草剤など、人体にとって危険な物質が植物に付いている可能性のある場所は避ける。
3一度に大量の採取はせず、少量だけ持ち帰る。
4むやみに根を掘り起こしたり枝やつるを切ったりせず、採取に必要な部位だけを摘む。
5絶滅危惧種など個体数の少ないものの採取はしない。
6有毒植物を誤って採取しない。

林地(深山、自然林、雑木林、人工林)

クロモジ、アケビ、キハダ、ブナ、ヤマザクラ、クヌギ、シイ・カシ類、トチノキ、杉、ヒノキなど

 

草地

ドクダミ、ゲンノショウコ、オオバコなど

 

稲、セリ、ガマ、レンゲソウなど

 

カキドオシ、スベリヒユ、スギナなど

 

河原

カワラケツメイ、セキショウ、ヤナギ類など

 

市街地

ヨモギ、イノコヅチ、アカメガシワなど

 

住宅街

タンポポ、クズ、カキノキなど

 

海岸

クコ、トベラ、ハマナスなど

 

 

和ハーブミニ図鑑

涼やかな和のミント ハッカ(薄荷)

 名の由来は「荷が薄く(軽く)てももうかる」ことから。和種ハッカは西洋ミント種よりもメントール成分を多く含んでおり、スーッとする清涼感の強さが特徴です。

活用方法

緑茶やほうじ茶にひとつまみのハッカを加えると、新しい味わいに。

 

香りと滋味あふれる ユズ(柚子)

 太陽のように彩り鮮やかで爽やかな香り。健康維持や美容にうれしいビタミンCやクエン酸、ノビレチンなどの栄養成分も豊富です。冬至の「ゆず湯」も身近な暮らしの風習です。

 

活用方法

果汁・果皮・生葉を丸ごと使って、タイ料理「トムヤムクン」の風味付けなどに。

 

 

庭先の優れた薬草 ドクダミ(蕺)

 日本の暮らしで多用されてきた和薬の1つ。生葉の独特の匂い成分はパクチーにも見られる物質で殺菌・抗炎症作用があるとされ、化膿(かのう)やかぶれ、水虫などに向いています。

 

活用方法

乾燥した葉を布袋に詰め、靴の中に収めてシューキーパーに。脱臭作用が期待できます。

 

 

忘れがたい森の香り クロモジ(黒文字)

 枝葉をちぎると立つ上品な香りはお茶やお酒、アロマに使われ人気です。つまようじの材料で芳香成分に殺菌作用があるといわれています。枝や幹の斑紋が黒い文字のように見えるのが特徴です。

 

活用方法

乾燥した枝葉をバスタブに浮かべて入浴剤に。細かくしてガーゼなどで包めば匂い袋にも。

 

 

爽やかな香りと多彩な魅力 カキドオシ(垣通)

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 バジルやミント、シソの仲間で爽やかな香りが特徴です。隣家との垣根を抜けて伸びていく、たくましい生命力が名の由来。利尿、血糖降下、せきを鎮める作用が期待されています。

 

活用方法

生の葉をピザトーストにたっぷりのせて。また、乾燥させて塩と混ぜた、香るソルトもお薦め。

 

 

世界中で食されるハーブ スベリヒユ(滑莧)

 多肉性で日なたによく育ちます。ビタミンやミネラル類、鉄分、カルシウムなどの栄養に優れ、中でも必須脂肪酸オメガ3が豊富。ぬめりと歯応えが癖になるスーパーフードです。

 

活用方法

生のスベリヒユをさっとゆで水気を切ったら、からししょうゆであえてお酒のおつまみに。